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小説6
挑戦

スキルの把握と、育成はある程度できた。
食料も残りがあまりないし、三階に挑んでみたいと思う。

ワニの《威嚇の咆哮》で動きが7秒封じられてしまうのが厄介だ。
だがLv12前後のゴブリン100体はいるし、足りなければ部屋を埋め尽くすほどゴブリンを出せばいい。
どうしても勝てなくても、逃げ帰るくらいはできるだろう。
俺は階段の近くにいて、ワニには木の棒を持たせたゴブリンを向かわせる、完璧な作戦だ。
え、卑怯?何それ聞こえない。

結果だが、俺たちはワニ改め三階のボスをかなりあっさり討ち果たした。
やはり数の理は正義である。
というか、俺は《威嚇の咆哮》による状態異常を受けなかった。
どうやら《威嚇の咆哮》は相手のレベルに応じて足止めできる時間がかわるらしいのだ。
Lv12のゴブリン達は3秒くらい固まっていたが、Lv38の俺はなんともなかったので、もしやと思って観察眼で見たら、奴のステータスが見えた。

【階級】3階層のボス
【種族】ロックリザードン
【レベル】Lv20
【スキル】《威嚇の咆哮》《ロックガード》
【祝福】《試練の神》

やっぱり、奴のレベルを俺は超えていたようだ。
そういえば三年前に来たときはLv6だった気がする。さすがにそれで勝つのは無理だよなぁ。
でも二階で三年間も無暗に過ごさずさっさと倒しにくれば良かったとガックリした。
だが調度ロックリザードンが鋭い歯でゴブリンを噛んで引き倒しているのを見てやっぱり一人じゃ無理、と思い直した。
チキンな己を恥じてはいけない、生存本能だ。

ということでゴブリン達に袋叩きにしてもらった。
3秒固まった時に何体かやられたりもしたが、《威嚇の咆哮》をする暇がないほど四方八方から打ちのめせばいくら奴が強くても勝てないことはない。

3分もしないうちにズドォンと音を立ててロックリザードンが倒れたので、近くに行ってみることにした。
確か《グラトニー》の追記には
「消滅する前であれば、支配下の魔族が倒したモンスターのスキルも吸収することができる」とあったはずだ。
手をかざして「グラトニー」と唱える。

【スキル】を取得しました。

《威嚇の咆哮》:自分よりレベルの低い敵に対して硬化の状態異常を付随させる。効果はレベルの差により変化する。また、自分よりレベルの高い相手には作用しない。

《ロックガード》:防御力が(小)上がる。

どうやら無事にスキルも増えたようだ。
スキルの内容を確認していると、一人のゴブリンが何かをこちらへ持ってきた。
ロックリザードンのドロップ品、のようだった。
最後に攻撃を与えて奴を倒したゴブリンが持ってきたらしい。
耳が他のより少し小さいのが特徴的なゴブリンだった
捧げ持って恭しく渡された細長い箱を、さっそく開けてみると中には質素で飾り気のない剣が一本と青い玉が入っていたので取り出してみた。

ポーン!
《グラディウス》を手に入れた。
闘神ボルドーの祝福を受けた剣。持ち主とともに成長することができる。
現在の効果:HP、筋力10%UP

ポーン!
《アイテムボックス》を手に入れた。
異空間収納が可能になります。

おぉ〜やっとまともな武器手に入れたよ。
いままでゴブリンのドロップ品だったしょぼい木の棒を振り回すだけだったから、すごく心強い。
しかも俺と一緒に成長するってことは、いちいち武器を変えずにずっと最後まで使えるってことだ。
よい相棒が手に入ったかもしれない。
だが、青い玉の方は手に取った瞬間に手に溶けてしまった。
《アイテムボックス》ってどう使うんだ?と思い浮かべると、アイテム覧が視界にうっすらと見えてきた。

【アイテム一覧】
《収納物》なし

ふむ。さっきまで持っていた木の棒に向けて試しに「収納」と言ってみる。
すると

【アイテム一覧】
《収納物》木の棒:1

となっていた。なるほど、これなら食料や他のドロップ品の置き場所に困らなくてもいいからかなり便利だ。
俺ボス戦では何もしてないのに、良いもの手に入れすぎて正直嬉しいやら申し訳ないやらだよ。

「お前たちありがとな」

とりあえずお礼を言ってみると表情は変わらないまま、かなり喜んでいた。
俺の前だと憚れるのか、普段はあんまりはしゃいだり騒がしくしないので今も静かだが確実に喜んでる。
なぜかって、尖った長い耳がいっせいにピクピク動いているのだ。
顔は醜いが、慣れれば愛着もわくかもしれないと思いつつ、俺は4階を目指して階段を上っていった。



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あきゅろす。
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