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小説2
黒翼塔の王冠


ピクピクと震えると身体が酷く辛かった。
しかし、散ってしまいそうな気力を無理やりかき集め、必死に目の前の小さな魔物を睨みつける。

「っ…ふざけるな…俺はそんな魔道の儀式など、うけないッ…」
「ジェム様、あらがう事はできません」
この世の覇王があなたの命と身体をお望みなのですから。そう言ってフランはゆっくりと身を起こした。

「さぁ、ここでは都合が悪いですので場所を動きましょう。少しだけご辛抱ください」
フランの手には、どこから取りだしたのか分からない黒いベルトや、鎖のついた手錠が握られていた。
抵抗するが、口へ早々に口枷を含ませられる。そして黒い布で目隠しされ、ガチャンと手枷をはめられる音が響いた。

「ふッ…んん゛!?」
「城の中には色んな生き物が思うように生きていますので、目を閉じていた方が恐くないですからね。」
子供に言い聞かせるような口調でフランはジェムの身体を拘束していった。
何か術をかけられたのか、身体自体が石のように重く動かせない。
グッタリと弛緩した身体から触手を解き、フランがシーツでジェムの身体を優しく包んでいく。
そして驚いたことに、ジェムの身体を軽々とベットから一人で持ち上げたのだった。

「僕はこれでも実力に関しては魔物の中でトップ3には入るんですよ。僕が傍についている限り、ジェム様に危害をくわえることは絶対にできませんので安心してくださいね」

そう言って抱かれた身体は、頑丈に拘束され、ピクリとも動かすことはできない。
危害を加えられる事がないのと同時に、この小さな魔物から逃げる事もできないのだと、無言で言わしめるように力のこもった両腕で抱かれ、運ばれていく。
その浮遊感がたまらなく不快で嫌悪に身体が震えそうだった。

今だ出たことのない部屋の外へ、まるで虜囚のように目も口も閉ざされ身体をフランに抱かれながら連れ出された。


――――――…‥

カツッカツッ、と石畳の床を歩く音が辺りに響く。
身体が受けるわずかな震動で、徐々に階下へ降りていっているのが分かった。
地下に向かっているのかもしれない。空気がどんどん重苦しく湿ったものに変わっていく。
どんな所に連れて行かれるのかまったく考えられず、不安と焦りに胸の中が塗りつぶされそうだった。
ずいぶん下まで降りたのではと思うころ、ようやくどこかの扉の前まできたらしい。
ギギィ、と扉の開く不気味な音が、地下の暗沌とした空気の中に響いた。

フランは、その部屋に入りしばらく歩いた後、不意に止まり何かの上に丁寧にジェムの身体を横たえた。
すると手枷はそのままだが、身体を縛る金縛りが少しずつ解けていく。まだ思うようには動かせないが、フランが拘束を解いたようだ。
身体をフルフルと震わせながら、手を徐々に顔へ近づける。それに気づいたフランが、「目隠しを外しますね」と相変わらず無邪気な子供の声で笑った。

目を覆う黒い布が外される。焦燥に駆られ、おそるおそる目を見開いた。
しかし、目に写るのはやはり日の光などではなかった。
今だ目枷をはめられたままなのではないかと思うほどその部屋は暗く重く、どこまでが部屋で壁なのかまったく分からないほど広かった。
湿っぽくまとわりつく空気が酷く不快だ。
一つだけともされた蝋燭の光が、逆に闇の濃さを浮き立たせ、ジェムですら恐ろしかった。

「遅いじゃないフラン。待ちくたびれたわ」
どこから響くのか分からない、子供とは違った高い声が辺りに満ちる。突然吹いた風が、いつの間にかあらわれた一つの影をゆらめかせた。


―――――――――――
ルーファとの濃厚Hを早くも書きたくなってきた管理人(ウズウズ)……ダメじゃんまだ先だよ誰だプロット組んだの…



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あきゅろす。
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