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櫻のもとで(蒼磨視点)

※櫻狩りより…



見上げれば満開の桜。

ザァッと一際強い風が吹いて、
目の前に花吹雪が散った。



君のもとにも、
届くだろうか。













*櫻のもとで*



















先刻まで感覚の無かった傷は
熱を持ち始め、呼吸をするのにも
ジクジクと痛みを伴う。



やっとの思いでここまで
歩いてきたというのに、
もう立ち上がれそうにもない。






上を見上げると、
風に揺れるたくさんの花弁があった。





ふっと、彼の顔に重なる。



始めは無垢な瞳に
心の中の氷が溶けていくようで、
その笑顔を向けられるたび、
とても大事にしたいと思った。




けれど愛すれば愛するほど、
心の狂気は収まることを知らず、
求める故に多くの傷を付けた。




それでも彼は自分を赦し、
それまで知らなかった彼の心も
自分だけに解き明かしてくれた。




彼に出会うまで
死しか求めなかった自分に、

人を愛すること
愛される喜び
人を想う優しさ
生きることの意味を教えてくれた。





昨夜限り、
たった一度だけお互いを共有出来ただけで
もう望むことは彼の幸せだけになった。




ずっと傍に居てほしい。
ずっと隣で笑いかけていてほしい。
ずっと彼を愛していたい。

そう思うからこそ、
もう、縛り付けてはいけない。


出会ったときから、
こう決まっていたのだろう。




ならば自分に出来ることは、













どうか、














どうか、










幸せに。















最期に見た景色は
泣きたくなるほど美しい、
満開の桜吹雪。





















__約束したから。

きっと、

絶対、生きてゆく、と。















*fin*


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