【ブライド・タウン】A 花婿一号と働き亜理

 小一時間前『ブライド・タウン』宿屋の二階の一室……顔出しのアリ着ぐるみの頭を外し、首から下を黒いタイツとアリの部分着ぐるみを着た少女〔十八歳〕が不安そうな顔でベットに座っていた。
 少女の前にはシャワーを浴びてきて、腰にバスタオルを巻いただけの『花婿一号』がいた。
 花婿一号は来週、花嫁十八号と何十回目の挙式予定だ。
 花婿一号がアリ人間の『亜理』〔あり〕に言った。
「アリはシャワーなんか浴びないか……脱げ」
「はい」
 働きアリの亜理は素直に立ち上がると、アリの部分着ぐるみを脱ぐ、胸部パーツやお尻から突き出したアリ腹部パーツ、手足のパーツを外した亜理は黒タイツを片肩から脱いでいく。
 パンツ〔ショーツ〕を穿いている腰までタイツを下げ、片足づつタイツを脱いだ亜理の身を守るものは下着一枚となった。
 アリから進化したアリ人間はパンツ〔ショーツ〕の縁に指を掛ける。
「これも脱がないとダメですか? 女王さまからの配給品なんですけれど」
「まぁ、人間とエッチするには脱いだ方がいいだろうな」
「じゃあ脱ぎます」
 亜理はスルッと下着を下ろして全裸になった。
 花婿一号が優しく亜理をベットに押し倒してキスをする。「んんっ」
 唇を離して花婿一号が言った。
「アリは虫だから、普通は人間とはセックスできないんだぞ……特別だからな」
「はい、あたしはちっぽけな虫けらです」
 花婿一号は亜理の性器に男性性器を押し込むと、腰を動かしはじめた。
 ギシッ、ギシッ、ギシッ、ギシッ、ギシッ、ギシッ。
 軋むベット、喘ぐ亜理。
「あっあぁんあっん」
 勢い良く部屋のドアが開き、怒りの形相で花嫁十八号が立っていた。
 花嫁十八号がアリに向かって叫ぶ。
「この泥棒アリ! 家の中にまで入ってきて! 出ていけ!」
「きゃん」
 亜理は黒タイツと着ぐるみを抱えると、裸で窓を突き破り二階から飛び降りて逃げて行った。〔アリはどんなに高い場所から落ちても死にません〕
 花嫁十八号は、亜理が忘れたアリブーツを、壊れた窓から放り投げる。
「忘れ物だ! さてと次は……」
 花嫁十八号は、来週挙式する花婿一号をモップでボッコポッコにした。
「この、この、この浮気者! よりによって懲りもせずに,また別のアリとエッチするなんて!」
「ぎゃあぁぁ!」
 花嫁十八号は、軍医タコたちが見ている前で花婿一号をボッコボッコにすると、フロントにもどり紅茶をすする。
 一部始終を見ていた軍医タコに十八号が言った。
「見たでしょう、前から浮気性だったけれど、ここにきて虫にまで手を出しはじめた……最低」

 翌日……軍医タコたちが朝食のカップ麺をすすっていると、花婿一号が血相を変えて食堂に飛び込んできた。
「大変だ! 花婿の重要な挙式アイテムの『エロいのDVD』を保管されていた金庫ごと盗まれた! 犯人見つけて取り返してくれ!」
「なぜ、そのことをわたしたちに……警察には」
「ブライド・タウンにいるのは、結婚式に関連した職種ばかりで警察とか探偵はいません……ちなみに、わたしは花嫁のヒモやっています」
 どうやら年間通して、結婚式ばかりしているブライド・タウンでは事件や問題が起こると、旅人に解決を頼るのが通常になっているらしい。
 立ち上がって軍医タコが言った。
「とりあえず、現場を見てみますか……金庫があった場所に案内してください」

 軍医タコたちが案内された二階隅の部屋に入る、床には重量があるモノを長年置いてあった、四角い跡が残っていた。
 軍医タコが言った。
「相当、重い金庫のようですね二階から、誰にも気づかれず持ち出すのは人間だと難しそうですね……引っ張った痕跡もなければ、重機とかを使った痕跡もなし……金庫の中に入っていたのは『エロいのDVD』だけですか?」
「『エロいのDVD』だけだ」
 軍医タコは開いた窓辺に移動する。
「この窓から運び出したと考えるのが妥当でしょう……魔法使いや超能力者が能力を使って持ち去ったとは考えにくい、財宝の在処のヒントとか、殺人者が知られたら不利になる映像が写り込んでいたとか、政府が極秘にしたい映像が『エロいのDVD』に映っていた……の可能性は薄いですね」
 軍医タコは窓枠に残っていた白い粉の跡をナメる。
「甘い……なるほど、犯人の目星はつきました」
 響子が叫ぶ。
「これは事件じゃけん! えっ、もう犯人わかったんですか? 科学捜査とかは?」
「必要ありません……さてと、花嫁十八号さんの部屋にいきましょうか」


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あきゅろす。
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