楽園追放B

 ミケとタローの子孫たちが畑の『禁断の野菜』を食い荒らし尽くした頃……バカンスに行っていた創造主が、やっと帰ってきました。
 麦わら帽子にサングラス、アロハシャツにハイビスカスで作った首飾り、短パンを穿いてビーチサンダルを履き、浮き輪に入ったラフな格好で日焼けした創造主は、荒らされた畑を見て唖然としました。
 股間をヤツデの葉で隠したミケとタローが、泣きながら帰ってきた創造主の前に土下座して謝りました。
「創造主さまが大切にしていた壷を割ってしまい、お詫びに『禁断の野菜』の毒で死のうとしましたが、ぜんぜん死にません……どうしたら良いのでしょうか?」
 創造主は頬の筋肉をヒクッヒクッさせながら『禁断の野菜』を食べてしまった者たちを許しました。
 その後……創造主に許されたミケとタローの子孫の一部の者たちの中から、創造主に対して傲慢な態度をする者たちが現れました。

 特に野菜を食べてから一週間で、現代風の衣服文明にまで急速進化してしまった種族〔スマホ族〕の創造主に対する態度には目に余るモノがありました。
「なーんだ、創造主なんてたいしたコトないじゃん……ちょろいんですけれどぅ」
 一日前は、髪を結って帯刀をしていた〔さらに前は甲冑を着て関ヶ原で戦をしていました〕スマホ族の、創造主をおちょくった悪口の数々をインターネットで見た、若い創造主は激怒して『ミケ』と『タロー』の子孫たちに向かって言いました。

「スマホ族はそれ以上文明を発展させるな! 出ていけ! ディスクワールドごと、この空間から出ていけ!
 スマホ族は創造主に抵抗する悪口を、ネットで増大させました。
「あぁ、出ていってやるよ!! 盆と正月と連休はまだ設定していない世界だから、帰ってこないからな!」

 創造主の言葉を受けて、ディスク・ワールドが流れはじめました。
 それを見た若い創造主は、しまった! と思いました。
 創造主の言葉は混沌から光りを生み出すほどの、強い影響力を持っていたことを思い出しました。
 いまさら、発した言葉を撤回できないプライドが高い創造主は、自分の空間から去っていく『ディスク・ワールド』をただ見送るだけでした。


【アナザーエデン『淫約聖書』第一章・創造主になったばかりの私は、こんなしくじりをしました】より


※『禁断の野菜』を野菜嫌いで食べなかったミケとタローの子孫が、その後の裸で外にいても平気な露出種族の先祖となりました。


※作中の『少し虚言癖がある、ウソつきな創造主』の箇所と『創造主の言葉は混沌から光りを生み出すほどの、強い影響力を持っていた』の二つ描写の矛盾について。
創造主は、誕生した時にさらに上位の存在『大神(その姿は混沌とした闇)』から、体の中にこっそり『三尸〔さんし〕の人』という。
お目付け役というか、創造主の言葉をウソが誠かジャッジする小人を入れられます〔たいがいの三尸の人は、頭の中にインサイド・ヘッドのように入っていますが……創造主によっては胸とか腹に、五人一組で入っている時もあります〕
その三尸の人が「今の言葉は軽いウソ……実現できる影響力はなし」「今の言葉は本気、実現を認める影響力あり」とジャッジしています。



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