桃太郎が裸で生まれてくる【桃源郷】B

 刀身の背をジリジリと擦り合わせながら、毒女桃太郎は涙混じりに言った。
「毒のマ●コを持って生まれてきたんだぞ……マ●コだったから、好きでもない男に処女を捧げるようにババアに命じられたんだぞ……すごく痛かったんだぞ」
 毒女桃太郎の恨み言葉は続く。
「ついでに後ろ穴の初めても奪われたんだぞ……口でもやらされたんだぞ……普通マ●コのお姉ちゃんに、毒マ●コの妹の苦しみなんてわからないだろうがぁぁぁ!!!」
 今にも殺意で姉を斬り殺しそうな妹の首筋を、ティティスの触手手刀がトンッと叩く。
「あ゛っ゛」と、小さな呻き声を発して、前屈みに意識を失った毒女桃太郎の体は、女桃太郎に支えられた。
 毒体で誕生させられた、妹の裸体を裸で抱き締める女桃太郎が意識を失った妹の耳元で呟く。
「辛かったんだな……もう大丈夫だ、名医がここにいるから。普通の体にもどしてくれるように、あとでお姉ちゃんが頼んでやる」
 そう言って、女桃太郎は軍医タコを見た。

 切り札として残しておいた毒女桃太郎が、役に立たないのを見た魔女母が何事も無かったかのように口笛を吹きながら。その場から歩いて離れようとする腕を若い娘桃ババアがつかむ。
「こら待て! 一人だけで、すっとぼけて逃げる気か!」
「放せ!! 老人に乱暴するな!!」
「都合が悪い時だけ、老人づらするな!!」
「え〜い、ウザい奴じゃ」
 魔女母が地面に煙幕玉を投げつけると広がった白煙が視界を遮り、白煙の中からどこに用意してあったのか熱気球が上昇してきた。
「ひひひっ……諸君さらばじゃ。あっ、桃ババア!! いつの間にゴンドラのロープにしがみついた? この熱気球は一人用で、おまえが底につかまると重量オーバーじゃ、若者はロープから手を離して降りろ!」
「誰が降りるか!! お主と儂は地獄の底まで、一蓮托生〔いちれんたくしょう〕じゃぁ!」
 魔女とババアを乗せた熱気球は、フラフラと風に流され低空飛行で川下へと飛んで消えていった。
 この時、白煙玉の爆風で熟した甘露桃が一個……地面に落ちてきた。
 完熟して甘い香りを放つ桃を前に、軍医タコが軽く桃を叩く。
「………………」
 内部からの反応は無い、村人が言った。
「無反応の桃なんてはじめてだ……斬ってみないと、内部がどうなっているのかわからない」
 軍医タコが女桃太郎に桃の切断を依頼する。刀の柄に手を軽く添えて構える。
 抜き放った刃の一閃が桃に走り。巨大桃は真っ二つに切断された。
 現れた断面を見た女桃太郎が、渋い表情をする。
「しまった、斬る向きを誤った」

 桃の断面には、桃のイモムシと新生桃太郎が双子胎児が向き合ったような形で縦の断面を見せて種子のように桃に入っていた。
 村人が言った。
「まさか、害虫と桃太郎が密着して同居していたとは……それにしても……エグい」
 ティティスが、断面を見ながら軍医タコに質問する。
「コレ……この桃、食べるのか?」
「まぁ、果肉の味には影響はないでしょう……どうせ」
 軍医タコはここで、一呼吸置いてから言った。
食べるのは隊長ですから」と。

【桃太郎の甘露桃】をゲットした軍医タコに、それまで静観していたドレス姿の『裸の女王』が訊ねる。
「『魔法の鏡』はどこにありますか?」

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