【童話の町】ですが何か?A

 軍医タコ一行は、小型タコ宇宙船で城に向かった。
 宇宙船は城の中庭に着陸した。
 城の中にあるバラ園には体にトランプの模様がボディペイントされた裸兵士の男たちが、互いの裸体に描かれた模様の剥げた部分を塗り直していた。
 軍医タコがスペード兵士の模様を塗り直している、ハート兵士に訊ねる。
 そのハート兵士もクローバーの兵士から背中のハート模様を修復してもらっていた。
「女桃太郎が、どこにいるのか知りませんか?」
「あぁ、それなら」
 顔に赤いハート模様が描かれた兵士は、先端がハート型になった槍先を城の方に向ける。
「東棟の一番外れの部屋にいるよ……広いから迷わないようにな」
「ありがとうございます」

 軍医タコ一行が中庭を望む回廊を進んでいくと、響子が庭の方を指差して言った。
「あそこに誰か倒れています?」
 見ると少し高い塀の近くに、うつ伏せで白い卵のコスプレをした人物が倒れているのが見えた。
 卵から出ている手足と尻が素足と素手と素尻なので、やはり普通の人物ではなさそうだ。
 裸エプロン姿の尻目が言った。
「どうします? 見なかったコトにして通りすぎますか……倒れている人が、悪い人なのか良い人なのか、変態な人なのか判別できません」
「変態な人は、童話の町では普通の人です……悪い人は少数です、あの卵の人は塀の上に座っていて落ちた『ハンプティ・ダンプティ』なので介抱してあげましょう」
 軍医タコたちは、うつ伏せで倒れている卵の人に近づいた。
「大丈夫ですか?」
 ひっくり返すと、割れた卵の中に、裸の美少年が意識を失って入っていた。
 思わず女性たちがゴクッと生唾を呑むほどの美形だった。
「マンガやアニメに登場するような、すごい美少年の裸男……アイドルかな?」
 女たちが興味深々に美少年のチ●コをいじくって刺激を与えていると、美少年は意識を取りもどした。
「うぅ〜ん……はっ!? みなさんは? なんでチ●コいじっているんですか?」
 軍医タコが訊ねる。
「あなたは?」
「ボクは、裸体男性アイドルユニットの一人です……卵で生まれてきて、仲間たちと塀の上に座っていました」
「なるほど“アイドルの卵”というワケですか……塀から落ちて、殻が割れて一皮剥けたと」
「はい、これでボクも先に誕生した、ユニット仲間のところに行けます」
 アイドル卵の美少年裸男は殻を割り脱ぐと、全裸になって一礼して小走りに走りはじめた……一度立ち止まると、軍医タコたちに向かって。
「嘘話を撒き散らす『嘘つきオオカミ少年』にだけは、注意してください……ボクたちのユニットも、オオカミ少年の嘘ゴシップ話には迷惑しているんです」
 そういい残して、剥き玉子のようなツルンとしたヒップの、美少年アイドル裸男は駆けていった。

 軍医タコ一行は城の中を進む……途中、廊下をモップで拭き掃除している女性に出会った。
 粗末な服を着て掃除をしている女性の足にはガラスの靴が光っていた。
 軍医タコが掃除の女性に訊ねる。
「すみません、女桃太郎が居る部屋にはここからどう行けば?」
 ガラスの靴を履いた女性が、そっけなく答える。
「そこの階段を上がって、右の方へ行った一番端の部屋だよ……女桃太郎に会いに行く前に、城主の『裸の女王』に一声掛けてからの方がいいわよ、この通路を進んだ奥の部屋に居るから……あれっ? あんたたち?」
 掃除をしていた女性は、響子と尻目の顔を凝視する。
「久しぶりね……前にも一度会っているわよね」
「えーと、あなたはいったい?」
「この格好だと、わからない? しかたがないわね」
 女性は衣服を脱ぐ、衣服の下からガラスのブラジャー、ガラスのショーツを身に付けた裸体が現れる。
 動くたびに、ガラスを擦り合わせる音が聞こえてきた。
 響子が懐かしそうに言った。
「あっ……『裸シンデレラ』さん」
「この姿にならないと、わからなかったの……もっとも、裸女だから服を着ていない方が普通か」



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あきゅろす。
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