【童話の町】ですが何か?@新たな食材探し

 山脈を越えて飛行するディフォルメしたタコ型小型宇宙船の中で、凍騎が軍医タコに訊ねる。
「次の食材は?」
「デザートの『桃太郎の甘露桃』です……舌がとろけて無くなるほど、甘く美味しい桃です」
「どこにあるんだ?」
『童話の町』に居る、女桃太郎が詳しく知っています……〔註〕『桃源郷』というところに生えている、桃の木に成っています。ちなみに女桃太郎の弟の男かぐや姫は『七賢者の竹林』に生えていた竹から生まれました」
「桃が生えている場所がわかっているなら、直接行って採ってきても?」
「それはダメです……女桃太郎の弟か妹が入っている桃ですから、桃太郎から桃を採る承諾を得ないと」
「そんなもんなのか」
 タコ型宇宙船は、童話の町の領域に入った……空にはホウキに股がった魔女や、ツバメの背に乗った親指姫たちの集団が飛んでいた。
 眼下にはお伽話に出てくるような町並みが広がっている。
 軍医タコが言った。
「いつ来ても、華やかでメルヘンチックな町ですね……あそこにある『幸福の裸の王子広場』に着陸しましょうか」
 タコ型小型宇宙船は広場の隅にある、パーキングエリアに着陸した。
 広場の中央にある、幸福の裸王子像のところでは、一人の少女が王子の股間に残っている最後の欠片を取ろうか、どうしょうか恥じらいながら悩んでいた。 像の中から町の人に裸体を被っていた金を剥ぎ取られ、股間の欠片のみを残す、変態王子が十七〜八歳の純情少女に言った。
「さあ、怖がらないで……最後の一枚を剥がしてごらん」
 少女は泣きながら。
「あたしには、ムリ〜っ!」と、叫びながら走り去って行った。
 軍医タコが、階段状の台の上に立つ裸の王子に話しかける。
「相変わらず元気ですね……幸福の裸の王子、ところで女桃太郎がどこに居るか知りませんか?」
 親指姫を背中に乗せた一羽のツバメが、スゥーッと王子の股間の辺りに飛んできて、親指姫が最後の金の欠片を剥ぎ取っていった。

 ビンッと男のモノが跳ねて、裸の王子は台の陰で背もたれしている『裸マッチ売りの少女』を指差す。
「この町の情報に関しては、彼女が一番知っていると思いますよ」
 裸で背もたれて座っている、マッチ売りの少女はやさぐれてブツブツと呟いていた。
「童話の町にも、タバコ吸う奴が減ってきてマッチなんか売れやしねぇ……ライター売っても、買う奴いねぇし……裸になって立っていたら目立って客が来るかと思ったら。童話の町には裸の奴いっぱいいて珍しくもねぇし」
 マッチ売りのやさぐれ少女は、座り方をヤンキー座りに変えると売り物のマッチを擦って炎を眺める。
「うへへへっ……いいねぇ、赤い炎ってのは……嫌なこと全部忘れそうだぜ……うへへへっ」
 危ない世界に行きかかっている、マッチ売りの少女に軍医タコが、女桃太郎の居場所を聞くと。
 マッチ売りの少女は、丘の上に見える尖塔の城を指差す。
「あの城に、女桃太郎ならいるよ」
「教えてくれて、どうもありがとう……助言です。マッチの炎は股間に近づけた方が、通行人が寄って来ますよ」
「こうか?」
 マッチ売りの少女が軍医タコの言葉に従って、マッチの火を陰毛に近づけると、黒々とした陰毛が燃え上がる。
「あちっ、あちっ、あちっ」
 慌てて陰毛に燃え移った火を叩き消す、マッチ売りの少女。火が消えて気づくと立ち止まった通行人たちが拍手をしながら、マッチ売りの少女の近くに次々と金貨を投げた……どうやら、大道芸の一種だと思われたらしい。
「へっ!? 毛が燃えたら金貨が!?」 その後……マッチ売りの少女は童話の町で、伸ばした陰毛やワキ毛を燃やす名物パフォーマーとなり、金貨や紙幣を性器や脇に挟まれるようになった。



〔註〕作中の桃太郎の桃とかぐや姫の竹が生えていた場所の記述は、作者の創作です。本気にしないように(竹林の七賢者が酒を飲んで集まっていた時は、服を着ていなかったと……調べていたら出てきたので【あたタコ】ネタに使わせてもらいました)


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