キノコ星の【ラブドール人間】A

 モノ扱いで作られている人間を見て、尻目が軍医タコに訊ねる。
「人間を作る工場なんて……ちょっと、酷すぎます」
「食用キノコだって工場で栽培生産しているでしょう……あれと同じです」
「でも、キノコと人間は……ちがう」
「そうですね、食用キノコは需要がありますが【ラブドール人間】の需要は少ないですからね……一体、一体、オーダーメイドのような形で製作されています。
たまたま今日は大量の輸出受注があったので、輸出用の製造ラインが稼動しているみたいです普段は一体の人間の体を、菌糸がていねいにいじくり回して【ラブドール人間】に変えています
 尻目が別のコンベア―ラインに目を向けると、首や手足が無い白い胴体だけのマネキン人形のような女体や男体が並んで流れていた。
「なんですかアレ? リアルで、やたらと生々しい首や手足が無い体みたいなのは?」
「【ラブドール人間】たちの食糧だそうです……各種の栄養素をバランス良く含有させて形成した、人工タンパク質食品です……細部にまでこだわって、胴体の中には白い内臓や血管や骨組織や筋肉組織もあるみたいです。切断しても血とかは出ませんが……まぁ、カマボコを人体の形に形成したようなモノですね、生食でも煮ても、焼いても揚げても食べられます」
「なんだか……気持ちが悪い食べ物ですね」
「さて、そろそろラブドール人間たちの村に向かうとしますか」

 人間工場を出た軍医タコ一行は、キノコの導き道を通ってラブドール人間たちが住まわされている村に到着した。
 アフリカにある泥で作ったような土壁に、菌糸の白い糸が広がる家が並ぶ村で、全裸のラブドール人間たちが歩き回っていた。
 軽く笑みを浮かべた表情のまま、ただ歩き回っているだけの、ラブドール人間たちを見て尻目が言った。
「活気が無い人たちですね」
「ここに集められているのは返品された人間や、新商品のために型が古くなって安売りでも売れなかった人間、大量生産されて売れ残った人間たちです」
 その時……ラブドール人間たちが持っていたスマホに一斉に、アラート音が鳴り響き。
 動き回っていたラブドール人間たちは、急にバタバタと倒れた。
 地面に倒れている者や、壁に背もたれ座っている者など……まるで、動かないリアルドールのようだった。
 驚いた尻目が軍医タコに聞く。
「ど、どうしたんですか? 急に動かなくなりましたよ」
「キノコ型宇宙人の話しだとラブドール・タイムだそうです……ランダムにアラームが鳴ると、ラブドール人間たちはされるがままのドール化しなければならないんです」
 動かない裸の人間たちを見ていた時……淫霊に憑依されている全裸の響子に異変が起こった。
 ガクガクと大きく痙攣して、別の淫霊が響子の中に入る。
 雰囲気が清楚な人格に一変した響子が地面に正座すると、三つ指を立てて頭を下げた。
「ようこそ、おいでくださいました……わたくし、ラブドール人間代表の淫霊でございます」
「これは、ご丁寧にさっきまで響子さんの中にいた淫霊の方は?」
「意識の奥底に引っ込み傍観しております……元々、どこからかフラッとやって来て勝手に総代表淫霊を名乗っている方なので……他の各星淫霊代表は、どこか秘めた事情がありげなあの方には、あまり本気で接してはおりませぬ……淫霊の未練を晴らして成仏させてくださる方々を、お連れしてきてくださるコトには感謝しておりますが」
「そうでしたか……あなた方、ラブドール人間の未練はなんですか?」
「見ての通り、わたくしたちはランダムにラブドール化してしまいます。全員が動かなくなりますので誰もセックスしていただけません……欲求不満が溜まっております
 尻目が響子に訊ねる。
「じゃあ、普通に動き回れる時間にセックスをすれば?」
「わたくしたち、ラブドール人間はドール化した時にされるセックスが、至福の喜びで快感なのです……それに、通常時のセックスはキノコ型宇宙人さまから、禁止されております……どうか、わたくしたちを満足させてください。ドール化は数時間続きます」

 理解した軍医タコがうなづく。
「わかりました、ドール化した。あなた方を性的満足させましょう……銀牙、ラブドール人間の女性の方々と手当たり次第にセックスしなさい
「はい、タコ神二号さま……ラブドールとセックスをします



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あきゅろす。
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