砂野スグリのロリコン帝国@

 昼を過ぎた頃……美久は、絶頂したサッパリ顔で土門たちがいる浜へもどってきた。
「すっごいテクニックでイカされちゃった……てへっ」
 ペットボトルは、あぁそうかい……と、いった顔で集めた廃品から何かを作っていた。
 浜辺で腕立て伏せをしていた、進化神ダーウィンが立ち上がる。
「次は儂の番じゃな……見届け人の二人も一緒に来るが良いぞ……えぇと、名前は誰じゃ? おまえは化け物か!?」
 進化神がそう言って、ヤマンバメイクの副官を指差した時、メタリックレッドに輝く蛾が一匹……どこからか飛んできてペットボトルの周囲を飛び回りはじめた。
「なんだ、この奇妙な蛾は? んっ、何か丸めた紙みたいなモノを抱えている?」
 ペットが気づいた時、メタリックレッドに輝く蛾が言葉を発した。
《あたしはヨーグル……ドスケベ女》
 蛾の言葉に驚くペットボトル。
「ヨーグル、おまえが軍医さんの手紙を蛾に託して届けさせたのか!?」
 宇宙を渡ってきた蛾は、丸めた手紙をペットの近くに落とすと、力尽きて死んだ。
 丸められていた手紙を広げて読むペットボトル。土門は死んだ奇妙な蛾を観察する。
「いったいなんだ? この蛾は?」
 進化神が言った。
「異形進化じゃ……手紙を届ける一念で、世代交代を繰り返して宇宙を進化しながら飛んできた宇宙蛾じゃ……おそらく、出発した時には数千匹、数万匹がおったのじゃろう」
「それだけのために進化を?」
「生物の進化など、以外と単純な理由や目的で進化する……さて、儂らも砂野スグリ退治に出発するとするかのぅ」
 進化神が空間を歪めてスグリの遊園地に向かい消えると、土門が手紙を読み続けているペットに訊ねる。
「どうして、クジ引きの順番に素直に従っているんだい……ペットボトルなら順番無視して、単独行動すると思っていたけれどな……気づいていたんだろう、クジがインチキだって」
「あんな単純なインチキ誰だって気づく……クジには最初から片面に青い丸印の二番手クジがニ本と、無印の三番手クジが一本しか無かった……二番手クジと三番手クジは、話術とトリックで自在に操作ができる」
「知っていながら、なぜクジ引きの時に黙っていた? オレはしばらくしてからトリックに気づいたぞ」
「進化神を一番手にしなかったからだ、普通ならさっさと神石を奪って終わらせるだろう……砂野スグリは、余裕で楽しんでやがる。だったらその楽しみに、つき合ってやろうかと思ってな……三番手ならスグリに対抗する武器を作る時間もあるから」
 ペットは読み終えた手紙を土門に渡す。
「タコの軍医さんは、さすがだな……無数のシュミレーションを頭の中で続けていて、今のこの状態も想定内の流れだとよ……軍医さんが想定していた通りに進んでいる、砂野スグリの弱点も二つばかり書いてあるぞ
 ペットはスパナを手に組み合わせた廃品のポルトを締めながら言った。
「なるほど手紙に書いてある通りの原理で発生装置を作れば、真地球から『どこでもホール』を一回だけ開けるコトができるのか、向こう側からしか質量制限の一方通行ホールだけど……面白くなってきた」
『裸族人類が存在する退屈でない世界』から軍医タコが進化した蛾に運ばせた手紙は、土門の他にももう二通……別の場所に届けられていた。

 真地球の建物の屋上に居る、裸族人類の憧夢は死んだメタリックブルーの蛾が運んできた手紙を読み終えた。
「タコ神さまから渡された、この矢にはそんな役割があったのね」
 憧夢は矢尻が特殊なハート型をした一本の矢を、まじまじと眺めた。

 同時刻……『アナザー・エデン』の『転生村』……破華姉ぇが、メタリックシルバー色の蛾が運んできた手紙を読み終えていた。
 手紙を運んできた銀色の蛾は、別種の普通の蛾と結合してギシギシと腰を動かして交配していた。
 破華姉ぇが呟く。



「タコの軍医宇宙人はとんでもないコトを考えたな……ここに真地球からの『どこでもホール』が開いたら、指定された人物を送り込めばいいんだな」
 破華姉ぇは、竹の長椅子に座って茶をすすっている人物に言った。
「その時が来たら頼む、砂野スグリのお尻をペンペンできるのは、あんただけだから……そうか、スグリは前世を通して蛾が嫌いか。だからスグリから妨害されるリスクが低い蛾に手紙を運ばせたのか」と……。



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