八忍剣士の妨害A『間毛犬吉』撃沈

 犬吉が我を忘れて暴走する。持ち上げた岩を投げつけてきたり、破壊した水車小屋の柱や板を手当たり次第に投げてきた。
 物陰に身を潜めた軍医タコたちも、お手上げだった。
 軍医タコが言った。
「ああいった、暴走パワータイプは……この『裸族人類が存在する退屈でない世界』では、対応が厄介ですね」
 ティティスの背中で鋭利な刃物化した黒触手が蠢く。
「あたしが始末しちゃいますか? 切り刻んで」
「そういった解決方法は、この世界では望まれていません」
 投げられ飛んできた水車が大破する。軍医タコが笛を取り出す。
「しかたがない緊急事態です、裸族人類の蘭花を呼びましょう」
 軍医タコが笛をピロロロロッと吹くと、蘭花が空から飛んできた。空中で羽ばたき停止している全裸の蘭花が軍医タコに訊ねる。

「お呼びでしょうか……二号神さま」
「蘭花、あの暴れている大男を止めなさい……方法は」
 蘭花の耳の穴に軍医タコの伸びた触手腕が入り、ゴニョゴニョと何かを伝えた。
「了解しました」
 蘭花は犬吉に向かって飛んでいく。犬吉は折れた柱を蘭花に向かって投げつける。
「おまえも、おらを負け犬と罵るだか!!」
 蘭花は飛んできた柱を手の爪で真っ二つに裂くと、股をおっぴろげて四肢で犬吉の顔面にしがみついた。
 顔面を柔らかい女陰に包まれた犬吉の動きが止まる。
 クンクンと蘭花の股間臭を嗅いだ犬吉が、穏やかな口調で言った。
「いい匂いだべ……フルーティーな匂いだべ……懐かしい匂いだべ、おっかぁを思い出すべ」
 犬吉の両腕が急速に萎み、枝のような腕になった。

 軍医タコが説明する。
「説明しよう。筋肉のリミッターを外して、限界以上に筋力を解放するのは、やはり時間の制限があります……裸族人類、蘭花の愛液には鎮静効果があります」
 犬吉の頭から離れた蘭花は、犬吉の頭を優しく撫でる。
「あなたは負け犬じゃない……人がどう思おうとも、自分が諦めない限りは負け犬じゃない……あなたは優しい人、それだけで負け犬じゃない……よしよし」
 蘭花が犬吉の頭を撫でながら言った。
「もう、暴れるのはやめて……犬吉の妨害は終わりよ」
「わかったべぇ」
 蘭花は犬吉の頭を抱き寄せ、犬吉も蘭花の胸に顔を埋めた。
『間毛犬吉』……裸族人類の乳房に撃沈。



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あきゅろす。
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