【転生村】@
谷底に清流が流れる、両側が山肌の渓谷鉄道を次の目的地に向かって走る、ライオン型列車の客車で先ほど停車した駅で買った駅弁の釜飯を食べながら、軍医タコが破華姉ぇに訪ねた。
「次の目的地はどこです?」
向かいの座席に裸で座って、大股開きで膣穴にストローを差し込んで炭酸飲料を飲みながら破華姉ぇが答える。
「『転生村』その村で生まれ、亡くなった者は男女逆転の転生を繰り返す不思議な村」
「面白そうな村ですね」
軍医タコが釜飯を食べていると、バスケットボール大の球体透明カプセルカバンに、詰まったノラ隊長タコが床を転がってきた。
「ぐふっ、ぐふっ、ぐふっ」
「げへっ、げへっ」
転がる取っ手付きの球体を、軍医タコは触脚で押さえる。
「この運搬容器は、転がりやすいのが難点ですね……おや? いつの間にか、カプセルの中でニ体に増えていますね?」
乙姫がカプセルの中に詰まっている、ノラ隊長を迷惑そうな目で見る。
「それなんとかならない……しょっちゅうカプセルから、抜け出そうとするし……生臭いし」
「そうですね、使い道があるかと思って運んできたのですが……使わなかったら、近日中に処分しますから。もう少しだけ我慢してください」
美尻で豊胸の乙姫は、モロ嫌そうな目でノラ隊長タコを見た。
船底にへばりつくフジツボか貝殻のように、断崖に民家が密集する秘境の山村『転生村』。
路線バスや鉄道路線、インターネット環境も整備されているため転生村の文化水準は普通に高い。
村人たちは村と谷を繋ぐクモの巣のように張られたワイヤーの上を綱渡りのように歩いて渡ったり、雲梯〔うんてい〕のようにブラ下がって移動したりして、崖向こうの町までの移動手段として利用している。
駅から出て着衣している村人たちを見て、響子が呟く。
「こうして見ると普通の田舎の村と、変わりませんね」
狭い駅前広場の前は断崖になっていて、数軒の家の瓦屋根が見えた。屋根の上には道が作られていて、その道も村の生活道路になっていた。
狭い土地を有効に使うための村の知恵だった。
商店と宿泊施設を探すために、駅前に設置された木製の古い村の案内図を見ていた軍医タコ一行に、駅の屋根の上から話しかけてきた人物がいた。
「こんな何も無い村に立ち寄るなんて、あんたたちも物好きな観光客だね……転生村には、雑貨店が一軒あるだけで宿屋はないよ」
見上げると屋根の修復工事をしている、女性大工の姿があった。女性大工は「あらよっ!」と、言って軍医タコたちの前に屋根の上からハシゴを使って降りてきた。
後ろ髪をポニーテールに束ね、職人タオルを頭に被った女性大工が言った。
「泊まるところが無かったら。ウチに来な……何人でも泊めてやっからよ」
軍医タコ一行は、女性大工の言葉に甘え、彼女の家に民泊するコトにした。
女性大工の家には、エプロン姿の男性がいて家事専門の主夫をしていた。
テーブルの上に料理を並べながら主夫が言った。
「何もない村ですけれど、この家には気兼ねなく何日でも泊まっていってくださいね」
胡座座りをした女性大工は、冷えたビールをコップに注ぐと一杯仰ぎ飲んで言った。
「かぁ……前世・男から今世・女に転生しても、仕事が終わってからの飲酒はやめられねぇな。さあ、客人どんどん食べてくれ」
出された夕食の料理を食べながら、軍医タコが女性大工に質問する。
「あなたは前世が男性だった時の、記憶を持っているんですか?」
「おうっ、ある年齢になったらいきなり前世で大工をしていた時の、男の記憶が甦ってな……今もこうして慣れた大工の職を継続しているってワケよ。前前世の記憶は甦らないが、村の記録だと前前世も女で大工仕事をしていたらしいぜ……男、女、男、女と繰り返して転生して同じ生活をするのが『転生村』の常識だぜ」
料理を運んできた主夫が言った。
「オレ……いや、前世は女だったから、あたしって言っていたけれど。前世は主婦が本業だったから、男に生まれ変わった今世も主夫をしていて……パートナーも、ずっと同じ人と結婚して転生を続けている」
家の屋根道をオート三輪自動車が通過して、家が揺れ天井からホコリが舞い落ちてきた。
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