【性別倒錯学園】B 乙姫の秘密

「あの乙姫とかいう女の尻の形は、アナザー・エデンで尻職人と呼ばれていた『織姫』という名前の女の尻の形にそっくりなんだ……これはアナザー・エデンに伝わっている有名な伝説なんだが」
 そう言ってから、破華姉ぇはアナザー・エデンの天ノ川で起こった悲劇を語りはじめた。

 その昔、アナザー・エデンの天界には牛飼いの『彦星』と機織り娘の『織姫』というカップルがいました。
 彦星と織姫は、天ノ川のデートスポットで毎日会って、イチャイチャとデートを繰り返していました。
 性的関係は一切無かった二人でしたが、その仕事をほったらかしにするほどの熱愛ぶりは、やがて織姫の父親である天帝の耳にも届き天帝は仕事をしない二人に激怒しました。
「怒った天帝は、彦星と織姫が二度と会えないように……娘の織姫を裸女に変えてしまいました。着衣をしている彦星と裸の織姫では、釣り合いがとれずに恥ずかしくてデートができなくなりました。
彦星には織姫と全裸デートをする勇気は無く……父親から裸女にされてしまった織姫は泣きながら、彦星から去っていきました……父親の天帝も、娘を裸女にしたコトに多少の負い目を感じたのか。織姫には龍の子供の特殊能力を与え、強い裸女にしてあげましたが……そんなコトはどうでも良かった織姫は、どこかへ行ってしまい……織姫の美尻のイメージだけが人々の記憶に強く残りました。と、いう話しだ……あの乙姫とかいう女に、織姫の雰囲気は似ていなくもないが。あんなに性悪な顔を織姫はしていなかったし、胸の大きさも違うから別人だろう」
「そんな悲劇が、このアナザー・エデンに……アナザー・エデンの裸女は天帝の力で生み出されるのですか?」
「いや、アナザー・エデンの裸女は自然発生で……織姫のケースは特別だ」
「そうですか」
 破華姉ぇと軍医タコが星空を眺めていると、コンドーム小僧が男女制服が逆転した『柚希』と『翔』を連れてきた。
 男子制服を着ている女の翔が、軍医タコを見て言った。
「本当にオレたちに、キスの指南をしてくれるのか?」
 女子制服を着ている男の柚希が、恥じらいながら軍医タコに訪ねる。
「あたしたち、セックスは経験済みですけれど……まだ、キスはしたことがなくて、アレって痛いんですか?」
「キスは、舌を噛んだりしなければ痛くはありませんよ……早速ですが、向かい合ってコレを唇に塗ってください」
 軍医タコが取り出したのはリップグロスだった。一本のモノが真ん中から二本に分離して使うコトができる。
 言われた通りに向かい合って、二つに分けたリップグロスを持った柚希と翔に軍医タコが言った。
「唇に光沢と艶が出る程度のリップですから……好きだと意識しながら、お互いの唇を塗り合うのもいいでしょう」
 言われた通り、向かい合って互いの唇にリップグロスを塗る、柚希と翔。
「塗り終わったけれど、これからどうす……おわっ!?」
 柚希と翔の唇が、引き寄せられるように密着した。
「うごッ……あごッ!?」
「おごッ……あぐッ!?」
 手足をバタバタさせて離れようとするが、唇はくっついたままだ。軍医タコが説明する。
「磁石のN極とS極の性質を持った、わたしの新発明『磁力リップグロス』です……キスしたくない相手には、同極にすれば唇が近づいただけで顔をそむけます。
姉妹品に女性性器の両ヒダに塗って性器を開きっぱなしにしたり、閉じっぱなしにする『性器用磁力グロス』も現在開発中です
 いきなり磁力の力で強制キスさせられて、慌てている柚希と翔に軍医タコがアドバイスする。
「互いの唇にグロスを塗っていた時の、好きだという気持ちを思い出して……相手を優しく抱擁してください。それが、あなたたちの性別倒錯キスです」
 軍医タコの言葉に落ち着いた柚希と翔は、抱擁して両目を恍惚に潤ませた。
 柚希と翔はキスを覚えた。

 二日後……コンドーム小僧を仲間に加えた軍医タコ一行は、柚希と翔に『性別倒錯学園都市』の駅ホームで見送られ、ライオン型列車で次の目的地へと向かった。



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あきゅろす。
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