母親と恋人の創造A

 飲酒が進んだ大神の気持ちも緩み、饒舌〔じょうぜつ〕になる。
《いろいろと喋ったらスッキリしたがや……気分がいいから、何か知りたいコトがあったら一つだけ教えてやるだがや》
「やはり、素人が人間創造をするとなると、失敗する確率も高いんでしょうね……百パーセント失敗しない方法なんて、創造主でしか無理なんでしょうね……素人でもできる、一番簡単な人間創造ってどんな方法があるんですか?
 軍医タコが焼けた隊長タコの足を、空に放り投げるとフワフワと浮かんで雲の中に消えた。
《人間の型に溶かして練った『生命の粘土』を入れてオーブンで焼くのが一番簡単な方法だがや……柔らかさは耳たぶ程度の固さにミネラル水で練って、焼き時間と火加減に注意だがや……焼き過ぎると褐色肌の人間ができるだがや、小麦色やココア色の肌が好みならそれでもいいだがや……この焼きタコの足、歯応えあってうみゃ》

 ここで大神は声を潜める。
《実は、大きな声では言えないだがや……素人でも人体創造を。確実に成功させる裏技があるだがやぁ》
「ほう……それはどんな?」
《型に入れて焼く前に冷凍庫で一晩、冷やして寝かせるだがや……そうすれば失敗しないがや》
 軍医タコは大神の言葉をメモする。
「やはり、最後は創造主が創造した人間の体の穴に直接口で、命の息吹きを吹き込むんですか?」
《それは昔のやり方だがや……今は市販されているコレを使うんだがや》
 雲の中から、携帯用酸素スプレー缶のようなモノが落ちてきた。
 スプレー缶には、吸引マスクの他にも、大小のチューブ口やストロー口のアタッチメントが付いていた。
『命の息吹き』だがや……それで肛門や口に息吹きを注入するだがや》
 軍医タコはスプレー缶を手にする。
「ほぅ……これを使って注入ですか、人間創造も進歩しているんですね」
 雲が晴れ青空が見えはじめた。
《今日は楽しかっただがや……さらばだがや》

 大神の気配が消えると軍医タコは、離れた場所で成り行きを見守っていた、破華姉ぇたちに向かって言った。
「それじゃあ、帰りましょうか」
 ちなみに……軍医タコと大神のヤリ取りの一部始終は、ディープ東郷の指示で撮影されていて。

 隊長タコが神罰を受けた際に、落雷の分岐した電流が紫郎が被っているヘルメットの方にも流れた影響で紫郎の人格に歪みが生じていた。

【ドクター・エロの研究施設がある、ウニ小惑星】……アナザー・エデンから破華姉ぇや、天狗裸女と別れて帰ってきた軍医タコは、二つの容器に入った『生命の粘土』をドクター・エロに渡す。



「こちらが、響子に誕生日プレゼントする恋人の『生命の粘土』です……響子に、想い描いた理想の恋人イメージを練り込む、下ごしらえは終わっています」
「わかった……しかし、冷蔵庫で一晩寝かせるのが失敗しないコツだったなんてな。ところで、そいつらは何だ?」
 ドクター・エロは撮影を続けている。ディープ東郷の撮影隊をマジックハンドで示す。
「わたしたちの人間創造に興味を持って、ぜひ記録映画を作りたいから撮影させて欲しいというので連れてきました」
「ふ〜ん、まぁ邪魔にならなければ別にいいけれど」
 エロは、小惑星で『生命の粘土』到着をずっと待っていた。タコスケと百鬼姫に言った。



「研究室の方へ一緒に来い、理想とする母親像を粘土に練り込むから」
 研究室に移動したエロは金属製の台の上に、母親製造用の生命の粘土を乗せて、タコスケに言った。
「理想の母親を想い描きながら、粘土を撫で回せ」
 股間を葉っぱで隠した百鬼姫が言った。
「オレも撫で回してもいいか? タコスケの母親なら、オレにとっても母親だから」
「別に構わないが」
 タコスケと百鬼姫が並んで粘土を撫で回す。やがて人肌の温度になった粘土が火照っているような感じに変わり、表面が汗ばんできた。
 ブルプルと震えはじめた粘土の中央に女陰のようなスジが現れる。
 エロが言った。
「下ごしらえは、そんなもんでいいだろう……二日後には母親が完成する」


 そして二日後……金属台の上に、型から抜いた。全裸の母親が仰向けで横たわっていた。


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