愛と嘘と謎と罠 B 尻目危機一髪

 紫郎と隊長タコが入ったヒョウタンを眺めながら、軍医タコが天狗裸女に質問する。
「紫郎の食事はヒョウタンの口から、焼いた肉の欠片でも入れておけば大丈夫ですか?」
「うむっ、ヒョウタンの中では。吸い込まれた人間のサイズから見て、食べ物は二メートルくらいの大きさに膨れるからのぅ……二メートルの焼いた肉は食べごたえがあるから、一週間くらいはそれを食い繋いでいれば大丈夫じゃ」
「トイレはどうなります? 紫郎がヒョウタンの中で排泄したら?」
「心配ない、ヒョウタンの口から水を注いで中の者ごと、ガシャガシャ振ればキレイになるわい」
 破華姉ぇは、軍医タコと天狗裸女の会話を聞いて。隊長タコに関わるとロクな目に合わないと思った。
 クローンカプセルの上に腰かけて、髪をクシでとかしながら、軍医タコと天狗裸女の会話が終わるのを待っていた、呪術師(残留意識体)が紫色に変わった瞳で言った。
《ところで……あたしの子孫は、この島で元気している? こんな目の色に、時々変化する人間なんだけれど》


 紫郎がヒョウタンに閉じ込められていた頃……月が照らす愛欲市の廃車置き場で、一人のヒーローが悪を追い詰めていた。 下半身はスニーカーだけ履いた丸出し露出で──上半身は赤いTシャツの上に短ランを着て。前髪を整髪料で前方に固めて伸ばした、いわゆるツッパリ風の髪型をした男子高校生……黒い布に目の部分だけに穴を開けたゾロマスクで正体を隠した熱血高校生『熱盛』〔あつもり〕の手にはムチの柄が握られ。
 月明かりの中、チ●コを揺らしながら、男の首に絡まったムチをグイグイと引っ張って熱盛は絞めつけていた。
 悪党に容赦のない熱盛が、月光を背に男に問う。
「一年前の4月29日……幽路という名前の女子高校生を、この島で抱いたのはおまえか!?」
 男は苦悶した表情で首を横に振る……悪党に嘘はつきもの熱盛は、今一度ムチを引き絞った。
 男の顔から血の気が消え、唇が紫色に変わる。
「答えろ! おまえだなぁ! 幽路と最後に寝た男は!」
「ち、ちがう……オレはその日、別の女と愛のあるセックスをしていた……うッ」
「嘘をつけ! 正直に答えろ!」
「嘘じゃない信じてくれ……女房に聞いてもいい……うぅ」
 熱盛はムチを少し緩ませて男に呼吸させると、再びムチを引き絞った。
「ぐはっ、嘘はついていないぞ……苦しい、もう勘弁してくれ」
「もう一つだけ質問する、おまえにセックスをする時だけ、相手の女を本気にで愛する暗示を施したのは誰なんだ、答えろ!」
「そ、それは……うッ!!!」
 いきなり男は、股間から白濁液を放出して果てた。
「チッ、まただ肝心な部分を聞こうとすると、その部分だけ記憶が途切れていたり。激しい頭痛に襲われて意識を失ったり。連続射精したりする……言葉や文字や言葉や画像でも他人に伝えられないように、催眠処理してやがる」
 ゾロマスクを外した熱盛は、月を見上げて呟く。
「幽路……おまえを最後に抱いた男は、いったい誰なんだ」
『禁断の根野菜』を半分だけ食べてやめた人間の子孫である、熱盛は月を眺めながらチ●コをしごいた。


 深夜0時を少しばかり過ぎた頃……軍医タコ、天狗裸女、破華姉ぇの三人が学校から少し離れたコンビニに、飲み物やちょっとした食べ物を買いに出掛けていた。
 テントに一人残って焚き火の前で留守番をしていた尻目は、廃校舎の方角から近づいてくる数名の足音を聞いた。
 炎の揺らぐ明かりの中……騎竜の手下の男子生徒三名が現れる。
 不自然な笑みを浮かべ続ける、男子生徒の一人が言った。
「おい見ろよ、焚き火の前に裸エプロンの女が一人で、しゃがんでいる」
「オレンジ色のタコは、いないみたいだな」
「騎竜さんは、様子を見てくるだけだと言っていたけれど……この裸エプロンの女を連れていって囮にすれば、手間が省けるんじゃねぇか」
「そうだな、拉致っちまうか」
 身の危険を感じた尻目は立ち上がると、男子生徒たちにヒップを向けた。



「うわっ!? なんだこの女!? 尻に目がある??



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あきゅろす。
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