裸族人類が存在する退屈でない世界A

 凍騎は触手王から触侵を禁じられ、凍騎自身も『触侵する意志はない』とは言ってはみたが、内心はこの世界を観察してみて『触侵可能な世界なら』触手王に触侵の進言をしてみようと考えていた。
 凍騎が蘭花に訊ねる。
「宇宙船に招待するとか言っていたが、ここからどのくらいの距離が……」
 と、凍騎が蘭花の隣を見た時……凍騎の表情が固まる、楕円形の『どこでもホール』が開いていて、オレンジ色をした軍医タコが穴の中から顔を覗かしていた。

 数分後……タコ型宇宙船の四畳半部屋のちゃぶ台で、凍騎とティティスに紅茶をすすめる軍医タコの姿があった。
「そうですか……今まで、さまざまな惑星を触手で侵略してきましたか」
 軍医タコの近くには、全裸で背中の翼をたたんで正座をしている、蘭花と銀牙のタコ側裸族人類二名がいた。

 正座をしたティティスと凍騎は、映画かドラマか芝居のセットみたいな、夕焼けに染まった半分だけある部屋で、落ち着きなさそうにしている。
 ドラマセットのカメラがある側には、床をモップ拭きしている裸エプロンの妖女〔妖怪裸女〕『尻目』と、犬小屋の入り口から、全裸の上半身を出して背を向けて横たわっている。
 ネギ色のツインテール髪の、エビとカニのハイブリット裸族人類『美久』がいた。
 軍医タコがティティスと凍騎に質問する。
「それでは、しばらくこちらの世界を見て回り見学したいと?」
「はい、なんでもこちらの世界にも触手がいるそうなので、別種の触手とも交流してみたいです」
「それは、なかなか好奇心旺盛なことで……案内役は必要ですか?」
「ぜひ」
「わかりました、こちらでなんとかしましょう……ただし」
 吸盤で畳に触手足をつけたまま、軍医タコの頭が、ちゃぶ台を挟んでグイィと凍騎の顔間近まで接近すると。
 凄んだ目で凍騎の顔を見ながら小声で言った。
「妙な気を起こして、この世界を触侵に巻き込んだら……わたしを含め、イカ型宇宙人、クラゲ型宇宙人をはじめとした、家畜三柱の宇宙人〔ウシ・ニワトリ・ブタ〕が黙ってはいませんよ……それぞれの宇宙人には、専属の裸族人類が控えていますからね……一体で宇宙連合の大艦隊を、沈黙させるほどの力を持っている裸族人類が」
 凍騎の頬を汗が流れる、凍騎は思った。
(このタコ、心が読める化け物か)

 元の位置に頭部がもどった軍医タコの顔に、何事も無かったように笑顔がもどる。軍医タコが言った。
「ちょっと、お二人に見てもらいたいモノがあります……尻目さん、掃除を中断して、こちらに来てください」
 尻目が軍医タコの近くに来た。
「なんでしょうか」
あなたのお尻を、別宇宙から来たお二人に見せてあげてください
「はい、こうですか?」
 尻目がヒップを向けた。



 卑猥な部分に縦に並んだ眼球を、ティティスと凍騎は興味深そうに眺める。
 軍医タコもジロジロと尻目の尻目を見る。
 ティティスが尻目に質問する。
「二つあるんですね目……」
「はい、メスの尻目ですからア●ルマ●コに一個づつ、一の目と二の目です……オスの尻目みたいに、一つ目にするコトもできます」
 ジロジロと軍医タコから恥ずかしい部分を見られている尻目が、軍医タコに訊ねる。
「あのぅ……あまりジロジロ見られると恥ずかしいんですが……軍医さん、この見せる行為になんの意味が?」
「いや、ただ見たかっただけです……と、いうのは冗談で。尻目さんにお願いがありまして」

 軍医タコは触手を伸ばして、部屋にある押し入れを開けた。中からカラカラに乾燥した隊長タコが転がり出てきた。
 凍騎が押し入れから出てきた物体について、軍医タコに質問する。
「その乾きモノは? いったい?」
「うちの隊長です……小人たちが住む『いやかさ軍国』に迷惑をかけたので、少々お仕置きで『精●と時の部屋』に入れておいたのを忘れていまして……ほら、隊長。お客さんに挨拶を」
 軍医タコが触手を伸ばして、干物になった隊長タコを引き寄せた。



[前戯へ][後戯へ]

3/64ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!