裸族人類が存在する退屈でない世界@

 漆黒の宇宙空間に……女性の内部女性性器、子宮と卵巣と膣の形に似た生物的な宇宙母船。
 後方には母船に鎖で引っ張られた、蠢く触手軍団の小惑星。
 さらには精子の形をした、数千の小型宇宙船が母船に寄り添うように航行している大船団がワープしてきた。
 女性内部性器型をした触手母船の一室で、触手助手のティティスが、触侵責任者の凍騎を起こす。



「凍騎さま、起きてください……緊急事態発生です」
卵形をしたコールドスリープ装置の中に全裸で眠っていた凍騎が目覚め、白衣を羽織る。
「どうしたティティス? 次の触侵惑星に向かう長距離ワープは、もう終わったのか?」
「ワープは終了しましたけれど……少々、厄介な事態になっていまして」
「厄介な事態?」
「とにかく、メイン指令室に来てください」
 凍騎がティティスと一緒に触手蠢く、大部屋に行くとティティスが触手壁の一部を指差して言った。
「とにかく、これから映る外の宇宙空間の様子を見てください……仰天しないように」
 壁の触手が蠢き、楕円形の巨大モニターが現れる。
 そこには、信じられないモノが映し出されていた。
「な、なんだアレは????」



 モニターに映っていたのは……巨大な亀の背中に、ブリッジをした裸の女が乗り、その腹の上には数頭の巨象と巨象に支えられた半球の大地……さらに、その上に円盤状の世界が乗り。一匹の大蛇がグルッと円盤世界の上から大亀の下へ回り囲んでいた。

 目が点になった凍騎が、奇妙な世界を指差しながらティティスに質問する。
「これは何の冗談だ?」
「冗談ではありません、あれはココの宇宙の地球です……どうやら、ワープ座標が狂って別宇宙に出てきてしまったようです……触手王さまへは、すでに亜空間通信で報告済みです」
「触手王さまは何と?」
《その世界では触侵を行ってはならぬ……そこにはタコがいるから》と」
「タコ? どういう意味だ」
「さあ?」
 その時、緊急を告げる警告音と点滅する赤色灯〔パトランプ〕の明かりが回転して、触手部屋を照らした。
 ティティスが言った。
「何かが、この母船に急接近……」
 ティティスの言葉が終わる前に、触手天井を高速回転する物体が突き破って侵入してきた。天井の穴は触手が動いて塞がる。

 物体は触手床に着地すると、回転をやめた。
 裸の女体……背中から生えた白い翼。
 タコ側裸族人類の『蘭花』が、優雅に会釈するように背中に翼を収納する。
 触手母船に侵入した蘭花が、ティティスと凍騎を見て呟く。
「タコ神二号さまが、おっしゃっていた通り……別宇宙からのお客さんでしたか」
 蘭花は自分の片方の耳を軽く手の平で覆うと、誰かに携帯電話でもしているような仕種をした。
「タコ神二号さま、蘭花です……やっぱり、別宇宙からのお客さんでした……はい、タコ型宇宙船の方に招待ですか……わかりました」
 通話を終えた蘭花は、フランス貴族の娘が舞踏会で挨拶をするように、裸体でドレスのスカートがあるように持ち上げると少し腰を屈める。
「突然の侵入、お許しください……タコ側裸族人類の蘭花です。これは、天井を突き破ったお詫びです」
 そう言って蘭花は、普段は閉じていて存在がわからない裸族人類特有の腹袋から、菓子詰めを取り出してティティスに渡した。
 菓子を渡されたティティスは、蘭花に頭を下げる。
「これは、ご丁寧に……あたしは触手群の一員、『ティティス』こちらは、触手王さまに代わって触侵を遂行する『凍騎』さまです」
「触侵ということは、この宇宙を侵略に来たんですか? こちらの世界にも触手はいますけれど?」
 凍騎が蘭花の問いかけに答える。
「今のところ、その意志はありません……どうやら、この世界は、わたしたちが居た世界とは雰囲気が大きく異なるようなので」



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あきゅろす。
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