海百合の花咲く頃D

 凍騎が言った。
「あの怪人が、怪盗Q2か……初めて見た。サーコお嬢さま、宝玉は無事ですか?」
 恐怖で小刻みに震えるサーコは、胸元にある偽物の『グリーン・キャッツアイ』を擦りうなずく。
 小太りの執事が蒼白の顔で「まさか、本当に怪盗が現れるなんて……そんなバカな」と、ブツブツ呟いているのを凍騎は横目で眺めた。


 犯行予告当日……令嬢のサーコと若い将校のユズキは、二人揃って栄国劇場のバルコニー席で観劇していた。
 華やかな舞台で、背中に極彩の羽毛飾りを付けた男装の歌劇団女優が、狭い階段を歌いながら優雅に降りてくるシーンや。
 激しい戦闘シーン、悲恋や恋心のシーンに劇場内の座席では乙女たちの、すすり泣く声も時おり混じる。
『栄国歌劇団・海組』歌劇【緑森の花嫁】公演初日というコトもあり、客席は満席だった。
 凍騎とティティスは一般席で、サーコを監視しながら観劇していた。
 ティティスが小声で凍騎に言った。
「小太りの執事が、落ち着かない様子で劇場内をウロウロしていますね」
「いつ怪盗Q2が現れるか、気が気でないんだろう」
 歌劇はクライマックスの、緑色の森を花嫁がさ迷うシーンへと移っていた。
 凍騎が小声で言った。
「なんでも【緑森の花嫁】の演出は途中で、大幅に変更されたらしい……演出家が、毎夜部屋の隅で蠢く緑色の触手の幻を見て、精神に変調をきたし今は入院中らしい」
「それじゃあ、今観ている芝居って……触手の力が加わっていて」

 その時、劇場内にいた執事が凍騎に近づいてきて囁いた。
「先ほどからサーコお嬢さまの姿が見えません……ユズキさまの姿も」
 うなづいた凍騎が立ち上がる。
「お嬢さまの行く先は、わかっています」
 凍騎は舞台上に組まれた、女体石像や壁画が配置された不気味な森の背景を指差した。


 小一時間後……一人、緑山家の敷地内にある森を歩いている、サーコお嬢さまの姿があった。
 その目は虚ろで,まるで何かに導かれているようだった。
 サーコの胸元にある『グリーン・キャッツアイ』は緑色に強く輝き、針目は森の深部を示し続けていた。
 サーコが進むたびに、木々の枝が左右に動き、道を作りサーコを森の奥へと導く。

 サーコは、歌劇団の舞台で観たのと同じ石像と壁画がある場所で足を止める。
 片膝立ちをした裸婦像に触手が絡まっている、卑猥な女体像と……裸の女たちが触手に弄ばれている、レリーフが彫られた壁画の台形ピラミッド建造物がそこにあった。
 蔦〔つた〕が絡んだ建造物には、長方形の入り口が開いている。
 サーコの頭の中に声が響く。
《やっとこの時が来た、我ら緑色触手の勝利だ……苗床の導きは成功した、契約更新の時だ……おまえの望みを一つだけ叶えてやろう》
 サーコが虚ろな目で答える。
「あたしの望みは……ユズキさまと、永遠に結ばれること」
《その望み、叶えよう……来るがいい》
 サーコは、和装の矢羽柄の着物と、藍色の袴〔はかま〕と、洋風の革靴の衣服一式を脱ぎ捨て、一糸まとわぬ姿になると長方形の入り口から中へと入って行った。
 石畳の通路を進むと、奥の方に淡い緑色の光源が見えてきた。
 地下の洞窟広場いっぱいに、薄緑色に発光して蠢く【緑色触手】の群れがいた……そこは緑色触手の『隠れ巣窟』だった。
 緑色触手が裸のサーコ言った。
《膣と膣近くのココア色の蕾を見せるのだ》
 サーコは、躊躇するコトなく。触手に向かってヒップを突き出すと、双丘を指で左右に押し拡げ……誰にも見せたことがない、少し濡れている女性性器とココア色の蕾を触手に見せる。
《魅惑的な膣穴膜とココア色の蕾だ……理想的な苗床になるだろう……その身を我らに捧げるのだ》
 サーコは、惚けた表情で緑色触手の蠢く池に入っていく……太股の辺りまで触手に埋もれたサーコの裸体へ、樹液で表面が滑る緑色触手が絡みつき……蹂躙〔じゅうりん〕と受粉が開始された。

 ぐぢゅぐぢゅぐぢゅぐぢゅ……サーコの乳と尻が、触手に弄ばれる。
「あふぅぅぅ……」
 サーコは、人外から受ける未知の快楽に生まれてはじめて、悦の声をあげる。
 緑色触手の先端が食虫植物の『ハエジゴク』のような形に変化してサーコの乳房をハンバーガーのバンズパンで包み挟むように、柔らかく食らいつく。



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