序章B

『王宮薬剤師』は旅の荷物をまとめると、馬に乗って王宮から三日はかかる『占い一族』の女が住む村へと星明かりの中を出立した。
 薬剤師と女占い師が旅立ち、朝焼けに空が薄っすらと白みはじめた頃……二つの流星が、それぞれ王宮近くの湖と王宮と占い師の村を結ぶ街道沿いの森に落下した。

 湖に落ちた隕石は湖底で、表面に開いているスポンジのような穴から水中に向かって、ドス黒い触手の蠢く群れを次々と放出した。
 水中で染みのように広がる黒い触手は、水中や水上の生物に襲いかかり次々と補食と異種交尾を行った。
 おぞましい触手にいきなり水中から襲われた、水鳥の群れはパニックになり。逃げ遅れたオス鳥は水中に引きずり込まれ、あっと言う間に群がる触手に補食され骨と羽根だけにさた。

「グワッ、グワッ」
「グヮッ、グヮッ」
 強制交尾されたメス鳥からは、触手が詰まった卵が急速産卵で産み落とされる。
 触手はいかなる生物からも、遺伝子を組み替えて触手を誕生させることができた。
 湖の触侵を完了した触手たちは、次々と岸から上陸して林の中を王宮へと進撃を開始した。

 森に落下した方の、両端が尖った棒状隕石は木々をなぎ倒してクレーターを作り、摩擦熱の水蒸気を出しながら沈黙を続けていた。
 一日が経過して熱が隕石から放出されると、隕石落下の異変を目にした近辺の町や村から、何事かと集まってきた人々がクレーターを取り囲んで見学している光景が見られた。
 見学者の中には、王宮に向かう途中に騒ぎを聞き付けて立ち寄った女占い師の姿もあった。

 クレーターの底に斜めに突き刺さっている、見えている部分が尖っている赤茶色の棒状隕石を見た、女占い師は激しい胸騒ぎを感じた。
「これは、いったい?」
 やがて大気圏突入時の大気摩擦で、溶けた表面がボロボロと崩れ、中から細長い尻尾を振る銀色の精子型宇宙船が現れた。
 見物人の中から恐怖の叫び声が聞こえた。
「怪物だ! 逃げろ!」
 一斉にクレーターから逃げ出す人々。精子型宇宙船の半分が現れ、三方に開いた船体の中からピンク色をした触手軍の本隊と紫色と黄色と黒色の触手分隊から、卵子のような小型宇宙船が触手に押されて転がり出てきた。

 ピンク触手……通常性行為触侵触手。男女の区別なく襲い交尾したり、男女を強制性交させる、触侵の主軸部隊。

 ピンク色の触手は集まっていた人々を次々と襲い衣服を剥ぎ取り、性交可能年齢の者を容赦なく犯していく。
「ひぃぃぃッ!」
「きゃあぁぁッ!」
 性交不可の年齢の者……幼い子供や老人は、紫色をした医療触手が捕らえゼリー状の繭〔まゆ〕に包んでいく。
 繭の中で幼き者と老人は触手に忠実な奴隷になるように洗脳学習され、幼き者は『成長促進処置』をされて肉体が性交可能年齢に達するまで急速成長させられ。
 老いた者は『細胞若返り処置』を施され、性交可能な肉体と年齢にもどされる。
 近くの村から幼い我が子の手を引いて見物に訪れていた、若い母親は触手に凌辱されながら、ゼリー状の繭の中で裸の我が子が成人女性へと、強制成長させられていく光景を涙目で見せつけられた。

 紫色触手……生物の肉体改造を受け持つ医術触手。
 黄色触手……生物の脳内にアクセス侵入して、情報収拾と意識改造を行う洗脳触手。

 容姿が醜女や醜男の者は、黄色い触手に捕らえられ触手を編んで作られた籠〔かご〕の中に放り込まれて囚われていく。
 触手の急襲に手にした農具で反撃を試みる者もいたが、黒い触手が抵抗する者たちの手から次々と農具を奪い。
 手足を触手で拘束されて身動きを封じられた男女の耳穴に、半透明ゼリーのような未分化幼体触手が注入された。
 幼体触手に体内侵入された男女は、脳内に寄生触侵されて 、自我を持たない触手の忠実な僕〔しもべ〕へと作り替えられた。
 女占い師も、黄色触手に捕らえられ。手と足を広げられた格好で空中に持ち上げられ、その口に侵入した黄色触手の口腔凌辱を受けていた。
「うぐッうぐぐッ」
 ヌチョヌチョと、触手抽送されている女占い師の口から、不鮮明な呻き声が漏れる。
 口から溢れる唾液……突然、黄色触手の先端が溶けはじめた。溶解の進行を食い止めるために途中でくびれ、溶けた箇所を自己寸断する黄色触手。

 トカゲの尻尾のように切り離された触手は、女占い師の口を塞いだまま蠢いていた。

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