触侵Bアドミニストレータ―〔管理者〕

 半分砂で隠れた入り口から、凍騎たちは建物の中に入った。階段を降りはじめると照明が自動で点灯する。
「発電動力は生きているみたいだな」
 数枚の遮砂扉を手動で開けて長い階段を下っていくと、円筒形の透明な筒に入ったエレベーターのようなモノがあった。
 白衣姿の凍騎が言った。
「ティティス、体内に宿して運んできた触手たちを目覚めさせておけ……この先は何があるのかわからないからな」

 地下へと続くエレベーターに乗り込んで下降する凍騎たちの目に、巨大なパイプが繋がり銀色のタンクが立ち並ぶ工場のような光景が飛び込んできた。
 裸のティティスが言った。
「何かの液体を製造している施設のようです……何かとても重要な羊水のような液体に見えます」
 さらに下降した別の階にはカプセル形の透明なケースが、並列した棚一面に組み込まれるように並んでいた。
 一つ一つのカプセルの中には、成人した裸の男女が眠って入っていた。
 男女の髪の長さや爪は適度に処理されている。
「これだったのか……集結していた生命反応の正体は」

 最下層に到着してエレベーターから降りた階の扉の向こう側には、蜂の巣のような六角形の容器が壁一面に埋め込まれていて中に小さな生き物が浮かんでいた。
 凍騎が近づいて覗いた容器の中に浮かんでいたのは、生き物の胎芽だった。

「もしかして、これは受精して八週間が経過した人間の胎芽か?」
 次の部屋へと移動すると、さらに成長して胎児の段階になった人間たちが、六角形の壁容器の液体の中に浮かんでいた。
「人間の製造工場だ……この地下施設は」

 凍騎がそう呟いた時、部屋の自動ドアが開きテカったキャットスーツ〔ナマズの皮膚のように、のっぺりとした質感の体に密着したボディースーツ……乳房の形とか、お尻のラインが丸わかりになる〕を着た。成人女性が入ってきた。

 キャットスーツの女性は、全裸で立っている復元女やティティスの姿を見ても特に表情を変えることなく。



 凍騎に質問してきた。
「おまえたち、いつ目覚めてカプセルから、どうやって外に出てきた? おまえ、変な白い服を着ているな? このエリアのどこにそんな服が用意されていた? 惑星の環境変化で各エリアとの連絡が途絶えてから数世紀……別エリアからの物資移動があるハズは無いのだが?」
 キャットスーツ女性の言葉から、凍騎は咄嗟につじつま合わせの嘘をつく。
「オレたちは別エリアで目覚めて、このエリアにやって来た」
「別エリアから? そうか……別エリアの施設では惑星の環境レベルが、人類が文明を再発展させて活動するのに適した段階に達したと判断したのか……このエリアの人類管理システムは、まだその判断は行われていない? エリアごとに判断基準が異なるっているのか?」

 凍騎は情報を引き出そうと策略する。
「このエリア施設の案内と、惑星の状況説明をしてくれないか……目覚めたばかりで勝手がわからないんだ」
「惑星の歴史なら成長過程の睡眠学習で直接脳に、送り込まれているはずだが? いつ目覚めて人類が活動を再開してもいいように……おまえのエリアの記録ベースに支障が生じたのか?」
「まあ、そんなところだ……オレのいたエリア施設との違いも確認したいからな」
「好奇心旺盛だな、いいだろう施設内を案内してやる……ついてこい」
 歩きながらキャットスーツの女性が、凍騎の質問に答えて名乗る。
「わたしは、この西エリアで、ただ一人だけ目覚めてシステム管理をしている『アドミニストレータ―〔Administrators・管理者〕』だ……名前はサーコ」

 凍騎とティティスがサーコと聞いて、生きていたら卵細胞組織があるはずの復元女の下腹部を見る。
「君の母親は?」
「そんなモノは知らない……我々は採取された卵子と精子を人工受精させて誕生する、人類だからな」
 前方を歩くサーコは、密着したキャットスーツのヒップの谷間がくっきりと分かる尻を悩ましく振りながら、近未来惑星の説明をはじめた。



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