触侵A白骨美女の触手人体復元術

「その地下通路パイプを使って、人間が生存しているエリア施設内には行けそうか?」
「わかりません、通路が破損していて通行不可の可能性もありますし……通路内に防衛システムが設置されていて、攻撃される可能性もあります」
 ティティスは、少し離れた場所から突き出ている岩を指差した。
「凍騎さま、あの岩近くの砂中から金属反応が……乗り物のようです」
「掘り起こしてみろ」
 ティティスの体から出てきた黒触手数匹がスコップのように変形させた頭部で砂を掘る……砂の中から、一人乗りのサンドバギーのような三輪の乗り物と白骨化した全身骨格の死体が出てきた。
 三輪は金属製のタイヤだった。

 白骨死体の近くには風化したボロボロの衣服や、砂を被った荷物のようなモノも出てきた。凍騎が砂の中から出てきた革の肩掛けカバンを開けて中身を確認する。
 錆びて中身が抜けた缶詰の缶、空っぽの穴が空いた水筒、ボロボロになった手帳のようなモノが出てきた。
 めくるたびに千切れる手帳のページから、凍騎が読み取れたのは『もう数日間、朝露以外の水を飲んでいない……水が飲みたい』の記述と『娘の名はサーコ……卵子提供者は、あたし』『中央エリアには辿り着けなかった』の記述だけだった。
「磁石のようなモノが入っている……どうやら、針が示している先が白骨化した人物が向かおうとしていた場所か、すると反対側が来た方角か」
 ティティスが凍騎に訊ねる。
「掘り起こしたモノをどうしますか?」
「そうだな……」
 凍騎は骨格標本のように綺麗に全身が揃っている白骨死体を眺める、この惑星の環境が人骨だけを残したようだ……凍騎が言った。
「赤触手と白触手と黄色触手を融合させた『肌色触手』で白骨死体を生前の姿に復元する」

 ティティスの体から出てきた、赤、白、黄色の触手が混ざり『肌色触手』が完成する。
 肌色触手たちは、白骨死体に付着を開始した。蠢く肌色触手が白骨をベースに人間を復元していく。
 数分後……復元された裸の女が、ゆっくりと立ち上がった。背中まで黒髪が伸びた成人女性だった。
 豊満な肉体の復元女の瞳は虚ろで、顔には表情がない。
 ティティスが言った。
「触手が動かしているだけの感情も知性も無い女です……頭蓋骨の中は触手しか詰まっていません」
「本来ならティティスを、この星の人間に化けさせて行動するつもりだったが……惑星の人間に出会わないので、この復元した女を代用する」

「掘り出した乗り物はどうします?」
 三輪バギーはフレームが少し破損していて、アナログ風のデジタル結晶メーターの表面にヒビが走っている以外は大きな壊れはしていなかった。
「動力は太陽発電電力か、少し修理すれば動きそうだな……銀色触手の力で一人乗りバギーを三人乗りに改造しよう」
 銀色触手たちがバギーに群がり、火花を散らして修理改造を進めていく。
 不足や破損している金属部分は、銀色触手たちが液体金属化して補い三人乗りのバギーを作り上げた。

 バギーの運転席に股がり銀色触手たちが補強した金属ヘルメットを被った凍騎がスタータースイッチを押すと、砂の中に長年埋まっていたバギーがエンジン音を轟かせて復活する。
 砂から拾い上げた両目を保護する防風メガネを装着した凍騎が、佇むティティスと復元女に言った。
「乗れ、ナビゲーションが復元した女が出発した地に導いてくれる」

 凍騎が磁石のような小型メカをバギーのナビゲーションにセットすると、モニターに矢印と人間が集まっているエリア施設までの地図と距離が現れた。
「行くぞ、振り落とされないようにつかまっていろ」
 ティティスが凍騎の腰にしがみつき、復元女がティティスの腰にしがみつく。
 凍騎はアクセルを吹かして、砂漠のバギー疾走を開始した。五日間かかり、凍騎たちは目的の場所に到達した。

〔移動中の凍騎の栄養補給と水分補給は卵子型宇宙船ポットに積んできた、丸薬のような携帯食料で補った……ティティスと復元女は、環境によっては、一ヶ月以上何も食べなくても平気だった〕

 凍騎たちが到着したのは砂に半分埋もれた、ビルのような高層建造物だった。
 壁面や屋上には、黒光りするソーラーパネルが設置されていた。破損したり壁から剥がれ落ちたパネルが砂に埋もれて放置されているところを見ると、人間の手による修理や修繕はされていないらしい。



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