ゾンビ・ワールドB

 建物の部屋の中には軍医タコと一緒に、全裸でゾンビ化した銀牙が天井が抜け落ちて覗く曇り空を仰ぎ見ていた。
 銀牙の裸体は、鉛色に変色していて脇腹には肋骨が剥き出しになっていて。頬の片側の肉が腐り落ちて歯茎が見えている。
 ゾンビ銀牙のゾンビ・チ○ポは、力無く床を向いたままだ。

 軍医タコが銀牙に訊ねる。
「蘭花は時空を越えて向かった先の『白霧の死者の船』で使命を果たして。このゾンビ・ワールドに必ず帰ってくるはずです……並列世界の健康体な銀牙に抱かれて生気を与えられ、朽ちた翼を元通りに復活させた姿で……待ちましょう。
ところでなぜ? この建物を蘭花との待ち合わせ場所に選んだのですか?」

「この建物の壁が、蘭花と初めて出会って。全裸で壁ドンをした想い出の場所だからです」



 銀牙は思い出すように、楽しげな笑みを浮かべた。
「あの頃は、オレもタコ側裸族人類として誕生したばかりで、全裸で過ごすコトに少し羞恥心がありました」
「今は? どうですか? 蘭花の“つがい”にするために、銀牙を裸族人類に改造しましたが」
「いろいろな羞恥の経験を積んできたので、裸体で出歩くのは恥ずかしく無くなりました……野外の自動販売機への買い物も普通に裸で行けます」
「それは良かった」

 銀牙と軍医タコが会話をしていると、部屋の事務机に鎖で縛りつけられている。
 笑い顔をした変なツボの中から、乙姫の怒鳴る声が聞こえてきた。
《出せ!! この封印のツボから出せ!! 精液を飛ばして、あたしをツボから出せ!!》
 軍医タコが乙姫を閉じ込めた、魔法のツボに向かって言った。

「出せと言われても……あなたが悪いんですよ。ゾンビ・ウィルスをバラ撒いて、世界をこんな風に変えてしまったから……それにしても、乙姫を封じ込めるキーワードがまさか、ツボに射精で白濁液をぶっかけるコトだったなんて」

 長年に渡り、乙姫が苦手とする笑い顔のツボに、乙姫を封じ込める方法は謎とされていた。
 クシャミ、アクビ、シャックリ、指の関節を鳴らす、鼻血、こむら返り、ヘソのゴマを取る、オナラ、ゲップ、母乳を飛ばす……いろいろと試してみたがどれも失敗だった。

 乙姫の封印に成功したのは、偶然に蘭花がツボに向かって尿道口から飛ばした女の精液だった。
「ツボから出るためには、同じ人間の精液射精が必要です……この不毛なゾンビ・ワールドを終わらせる瞬間を、あなたはツボの中で迎えてください」
《冗談じゃないわよ!! こんな狭いツボの中で終わってたまるか!! 出せえぇぇぇぇ!!》

 ゾンビ化した軍医タコと、銀牙は乙姫の叫び声を無視して曇り空を見上げ……蘭花の帰りを待った。



[前戯へ][後戯へ]

3/43ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!