居酒屋にて……集いし半裸人類A

 土門がオカの質問に答える。
「【第四の障壁】に関してはオカ先生は、知らない方がいい……この世界には知らない方がいいコトもある」
「??……意味不明、なんか炭酸飲んだら体が火照ってきたから……あたし、脱ぐ『アイアンレディ』になる」

 そう言って立ち上がったオカ先生の衣服が千切れ飛びスッポンポンになった……全裸になった女性教諭に向かって、どこからか細かい金属パーツが飛んできて、次々と装着されていく。

 肘から先の腕と、膝から先の足をパーツが包み。額を翼のオブジェが左右に付いた、ヘアバンドのようなパーツが取り囲む。

 胸と股間には、ホタテ貝の形をした水着のような金属パーツが装着され『アイアンレディ』が完成した……胸と股間のパーツは後ろから見ると、鎖で留められているだけの、うっかりすると外れそうな危なっかしい装備で……股間の金属ホタテ貝と手の平には、丸いレンズのようなモノがあり、熱線が発射されそうだ。

 まるで、ファンタジー世界の戦士ヒロインのような格好になった、アイアンレディがポーズを決める。
「触手ぬるぬる……アイアンレディ参上!!」
 アイアンレディの股間から、ヌルヌルした四本の触手が伸びてきて蠢く。

『アイアンレディ』と『女将ニッポン』が何やら談笑していると、扉を開けて『手ブラの天紅』が両胸を押さえ隠しながら、遠慮気味に入ってきた。

「タコ、イカ、クラゲの半裸人類が集まっている……かもね」
 天紅のすぐ後ろからは、あまり歓迎されていない人外の酔っぱらい客も続いて入ってきた。

「うぃ〜っ、酔っぱらいだぞぅ……軍医、こんなところに居たのか探したぞ」

 頭にネクタイを巻いて、ヌチュヌチュと床を這うように入ってきた隊長タコの姿に、複数の者が顔をしかめる。

 呆れ顔の軍医タコ。
「隊長……別に呼んでもいないのに、どうしてココだとわかったんですか?」
「いやぁ、店の前に裸の女が立っていて。店に入る機会を窺っていたから誰かと思ったら天紅ちゃんだったから……なんとなく、後ろからついて入ってきた」

 隊長タコが触手で天紅のヒップを触ると、天紅は「ひッ!?」と短い悲鳴を発した。隊長タコが女将ニッポンに言った。
「女将、熱燗を瓶ごとくれぇぇ」

 女将ニッボンは、グラグラに沸騰したお湯の中で、お燗していた、一升ビンを丸ごと隊長タコに向かって投げつける……煮えた一升ビンは隊長タコの顔面にめり込む。

「むぎゅぅ」「酔っぱらったタコに飲ませる酒は、うちの店には置いてない!」

 壁に激突した隊長タコを無視して、軍医タコが立ったままの天紅に訊ねる。
「それで、お話しとはなんですか?」

「帰ってきた『創造主』が、また良からぬコトを企んでいるのは知っている……かもね」
「えぇ、マッドサイエンティスト協会からも、通達は受けています……なんでも裸族人類に対するリベンジを企んでいるとか……今度は『赤いゴキブリ星』を、この“裸族人類がいる退屈でない世界”の地球にぶつけて『エデンの園』を再創造する悪巧みが進行中らしいですね

「どうしてそこまで知っている……かもね?」
「この動画ですよ」

 軍医タコは取り出したタブレットで、ある投稿動画を再生して見せた。
 そこには、銀色のカツラを被ったゴリラと創造主が仲良く並んで《エデン再生計画だなぅ!》と、この世界を描いたイラストを手に、悪巧みを説明している姿が映っていた。

 軍医タコが言った。
「創造主は、自己顕示欲が強い人のようですね」

 軍医タコの説明が続く。
「この世界〔地球〕は、ご存じのように大亀の上でブリッジをした裸身女の腹の上に乗った四頭の巨像が背中で支えている半球型をしているのが通説です……創造主は、今はなくなってしまった半球の上に乗っていた円盤状の『エデンの園』の土台を『赤いゴキブリ星』を使って作ろうとしています」





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あきゅろす。
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