サイボーグ・キュウちゃん誕生秘話B

 九号女性は自分の心臓がある辺りに軽く手を添えた。
「心臓……鼓動ありません、代わりに小さいモーターの回転音が響いています?」

「あなたの生命維持に必要な臓器は、バイオ臓器や人工臓器に交換されて、かなりコンパクト化されています……『人工子宮』は移植されていますから、その部分だけは改造されても女性の部分として残してくれたみたいです……人工子宮ですから、生理はありませんが」

 九号女性は、感慨深く下腹部を擦る。
「あたし、サイボーグだけれど、赤ちゃん作れるんですね」

「さらに、中出しされた男性の精子を『一年間凍結保存できる機能』も、子宮近くに組み込まれているので、好きな時に精子を解凍して妊娠することができます……保存期間の一年間が過ぎて賞味期限が切れた精子は、自動的に体外に排出される仕組みになっています……次はアナルと尿道口について説明しましょう」

 九号女性は、さっきまで充電コネクターが差し込まれていた、お尻を恥ずかしそうに両手で押さえた。
「すでに、ご存じだとは思いますが。あなたのお尻の穴は、充電用の差し込み口に変えられています……その穴を使ってアナルセックスを、やろうと思えばできますが、相手の男性が感電する恐れがあります……あなたの、お尻の穴と、おしっこの穴は排泄器官としての役目は終了しました。性ボーグに変わったあなたのお尻の穴と、おしっこの穴は単なる飾りです」

 九号女性は意識して、お尻の穴と膣穴をキュッと絞める。
「あたしのアナルと尿道口……飾りになっちゃったんですか」

 軍医タコは一冊の説明書のようなモノを、九号女性に手渡して言った。
「他にもいろいろと機能はありますが詳しくは、わたしが作りました取り扱い説明書〔※現在公開可能な【あたタコ】情報の中にある【裁縫部・キュウちゃんの能力】〕を読んでください」

 九号女性は自分の体の説明書を、パラパラと読みながら『超音波振動砲』が発射できる乳房を谷間からパカッと両側に開いてみた。
 ソフト素材で作られた乳房の下には、敵の光学兵器を跳ね返す鏡面の平胸が現れ。

 開いた乳房の片方の裏側に『超音波振動砲』の文字と制作者の名前と日付が墨文字で書かれていた。

 九号女性が軍医タコに訊ねる。
「乳房の裏側に書かれている、この墨文字はなんですか?」
「制作者の名前と日付です……ほら、よく古い寺院の修復とかをする時に天井の剥がした裏板とか、年代モノの仏像の中から、制作者とか日付の墨文字が発見されるコトがあるでしょう……それと同じです、乳房の制作者名はケン・フラン教授です」
「はぁ……?」
 九号女性は静かに乳房を閉じる。

 軍医タコが言った。
「好きなだけ、機械城に滞在していてもいいと男爵は言ってくれていますから。組織からの追っ手も心配なく、ケン・フラン教授の名前を出して『教授の技術協力を得たかったら、改造した彼女には今後一切関わらないこと』と、釘を刺しておきましたから……改造された体に慣れるまでは、裸で過ごした方がいいですね
「はぁ?……いろいろと、ありがとうございます」

「城の中は自由に行き来きしてもいいそうですが……地下にある『裸の若い男性が黒い革の手術台の上に横たわっている部屋』にだけは、絶対に入らないでください……いいですか、たとえ部屋のドアに鍵が掛かっていなくて、少し開き気味になっていても……部屋には入らずに、男性にも話しかけないでください……階段を下りて、三つ目の角を曲がった突き当たりの、わかりやすい部屋ですから」

「はぁ?」
 九号女性は首にチョーカーのように巻かれた、ドッグタグを軽く擦りながら。熱湯風呂の「いいか、絶対に押すなよ! 絶対だぞ!」の前フリのような、地下室の部屋に一番最初に行ってみるコトにした。



[前戯へ][後戯へ]

9/43ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!