我美の野望・封印された乙姫②
我美が、お腹の袋から取り出したのは乙姫の夢に幾度となく出てきた、笑い顔の壺〔つぼ〕だった。
「ひっ！？」
乙姫の顔色が変わる。
乙姫は召喚したヘラクレス甲虫型タイムマシンに急いで乗り込むと「ぼか～ん！」と爆発音を響かせながら、タイム空間へと逃げ込んだ。
我美は、慌てずに腰に変身ベルトを装着する……鉄道の山の手線路図のようなバックルが付いた部分に乗車パスのようなアイテムをかざす。
裸体に変身ベルトをした我美が言った。
「逃がすか……変身」
我美の前に時を駆ける電車が出現して、乗り込む我美。
先頭車両の中にあるバイクに裸で股がった我美は、乙姫を追って時を駆ける電車を操縦する。
タイムトンネル内を逃げる、ヘラクレス型タイムマシンの後方が見えてきた。
バイクと連動した電車を運転する、我美の瞳の色が赤く変わる。
「ボク参上！ 逃がさないって言っているでしょう！」
我美は取り出した携帯電話で、タイムパトロール隊に通報する。
「もしもし、指名手配中の『違法時間航行常習犯罪者の乙姫』を見つけましたよぅ……現在、亜空間に逃げ込みました。亜空間ポイントは……」
亜空間を乗り継いで我美から逃げてきた乙姫は、安堵の息を漏らす。
「ここまで逃げれば、さすがの我美だって追っては……」
乙姫がそう思った時……今度は、赤色灯を回転させてタイムパトロール機動隊バイク隊員が後方の横空間から現れた。
《違法時間航行常習犯罪者『乙姫』！！ 速やかに路肩空間に移動して停車しろ！！》の声が聞こえ。
乙姫は「ヤバッ！」と、呟いてタイムマシンのスピードを上げると、別の亜空間に飛び込んだ。
次の瞬間……『赤いゴキブリ星』から帰還途中の宇宙船の横側に突っ込むように、亜空間に出現したヘラクレス甲虫型タイムマシンの角が衝突する。
イラつき怒鳴る乙姫。
「何、ノロノロ亜空間航行してんのよ！ こんな場所を飛んでいた、あんたらが悪い！」
そのまま、宇宙船を座標外の宇宙空間に弾き飛ばした。乙姫のタイムマシンは、タイムパトロール隊のバイクさえも振り切った。
数分後……乙姫が乗ったタイムマシンは、太古の地球に辿り着いた。
恐竜が大地を跋扈〔ばっこ〕していて、海洋には首長海竜が泳ぎ、火山が噴煙を上げてい空には翼竜が飛んでいる世界だった。
崖の前に立った乙姫は、一旦乗って来たタイムマシンを空間ガレージに入れて隠した。
「しかし、我美の奴に、あんな野心があったなんて迂闊だった……人のモノを横取りするなんて、泥棒ネコじゃないの」
乙姫が背後の岩肌に背中をつけて、深呼吸した時……時空間から線路が飛び出してきて、時を駆ける電車が出現した。
電車が走り去ると、そこに薄笑いを浮かべた我美が立っていた。
我美が言った。
「ムダムダ、ボクからは逃げられないよ……カブトムシ型のタイムマシンを違法改造した、ヘラクレス甲虫型のタイムマシンで逃げられる過去は、恐竜の時代まで……時間を飛び越えられる不思議な『とんでもないハウス』を使うと。聖書とか神話世界の過去にしか、もどれないのは知っているんだからね」
咄嗟に乙姫は肉体の能力を使って、世界に数丁しか現存しない赤い光弾を発射できる銃を取り出すと、銃口を我美に向ける。
すかさず我美は、カードのような物を飛ばして乙姫の手から銃を弾き飛ばす。我美の腰に別の変身ベルトが現れた。
「変身」
我美は取り出した一枚の無地のトランプカードを、乙姫の股間に向かって投げつける。
飛んできたカードは、乙姫の生殖溝に突き刺さる。
「うッ！？」と、呻き声を発した乙姫の背中側が岩にメリ込むように同化して、乙姫の裸体は岩壁に石化した。
岩から掘り出された彫像のようになってしまった、乙姫の胸を撫で回しながら我美が言った。
「乙姫……封印完了」
性器溝に石のカードが刺さった形で封印されてしまった、乙姫の唇を軽く指先でなぞる我美。
「さてと、竜宮城に帰るとするか……心配しなくていいからね、乙姫のモノは全部ボクが頂戴するから」
竜宮城に帰ってきた我美に、女体ケンタウルスたちや、増量チ○ポ男たちから「我美さま、ばんざーい！！」の賛美する声が聞こえてきた。
乙姫を封印したコトで歴史が変わった。差し出されたマントを羽織って女帝椅子に座った我美の前に、岩盤ごと切り取られた、乙姫の封印石像が台車で運ばれてきた。
歳月が経過している封印石像は、股間に刺さったカードは風化して半分ほど残る程度になっていて。乳房や腹には亀裂が走っていた。
我美が言った。
「さっき、封印したばかりなのに……時の流れは残酷だね、竜宮城の壁に組み込んで乙姫の裸のオブジェとして、未来永劫飾ってあげるよ」
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