赤いゴキブリ星@

 軍医タコとゴキブリ少女の親しげな会話に、蘭花が横からツンツンと軍医タコの触手を遠慮気味に触れて、軍医タコに聞いてきた。

「あのぅ……タコ神二号さま、盛り上がっているところ恐縮ですが、状況を説明してもらえませんか。そちらのゴキブリみたいな娘は、いったい?」

「これは、うっかりしていました……響子のエデン・シンドローム発症のゴタゴタで、話す機会を逃してしまって……彼女は楕円軌道で周回している、ゴキブリ遊星に住んでいる『ゴキブリ星』のゴキブリ人類です……自己紹介を」

「はい、あたし赤いゴキブリ星に住む『湘ヶ崎 嬢子』〔しょうがさきじょうこ〕って言います……みんなからは『ショジョ』って愛称で呼ばれています……ちなみに、こんなコトもできます」

 そう言ってショジョは、人差し指の先から蜘蛛糸のようなモノをニュルと出して見せた。

「なぜか、生まれた時から。ゴキブリ人類の中で、あたしだけ糸が出るんです……この糸を出した時は、エッチな気分になって思わず『ムラムラムラムラムラ!!』って言っちゃいます」

「ショジョさんとは、先ほど受信した救援要請の亜空間通信で知り合い、親しくなりました……なんでも、わたしたちの知っている着衣人類とは違う、別地球の着衣人類の侵略を受けているとか」

「そうなんです、お願いしますみなさん、あたしの星と仲間を助けてください!」

 ショジョの説明だと、ゴキブリから進化した人類が住んでいる赤い遊星は、文明レベルは高くはないが平和な生活を営んでいる星だった……その星に前触れもなく、一隻の軍事宇宙船が飛来して攻撃してきたというのだ。

「あたしたちは、本来争いは好まない種族です……いったい、あたしたちゴキブリが何をしたっていうんですか? 台所や浴室などの室内に潜んで生ゴミを漁り、隙間で大量繁殖して。頭が半分もげてもしぶとく数日間は生きていて、体がテカテカと脂ぎっている油虫で。悲鳴を発した人間に向かって飛んできて、人間の髪の毛とか垢とかフケなんかも平気で食べちゃって……たまーに病原菌をバラ蒔くだけじゃないですか……大半のゴキブリ種は、野外の森とかで平和に暮らしているんですよ……人類が滅亡した後、繁栄して地球の支配権を得る候補生物の一つって、言われているだけですから」

 ショジョの話しをお尻をペチャペチャ叩かれながら聞いていた、黒夜美の「嫌われる要素だらけじゃない」という、独り言を無視してショジョの話しは続く。

「あたしは、ゴキブリ仲間と人類の宇宙船に侵入して、一人乗りの脱出ポットみたいなのを奪い助けてくれる人を求めて宇宙へ……あたし一人を逃すために仲間は犠牲になって、殺虫剤とか丸めた雑誌で……ぐすっ」

 軍医タコが言った。
「かなり危険な脱出計画だったみたいです……敵の宇宙船の中には、粘着式の罠とか、バル○ンを焚いた部屋もあったそうです……宇宙空間へ有人ドリルミサイルで出た、彼女は周波数が異なる亜空間通信でSOS発信を……偶然わたしが、その信号をキャッチしてタコ型宇宙船まで誘導したと……いうワケです」

「助けに行くんですか? タコ神二号さま」

「彼女の話しを聞くと、響子のエデン・シンドローム発症と、赤い遊星の接近は関係があるように思えます……響子の治療のためにも、ゴキブリ星に向かわなくては」

 裸女たちが口々に言った。
「助けを求めてきた者を救うのは、アニロボ裸女の使命だずぇぇぇと!」

「わたくしも、協力しますわ……裸女の未来のために」

「きゃははは……ゴキブリ星で誰かに化ける時は、妖女のあたしにお任せを」

「童女も協力する」

 紫音、秋、ウニ子の三裸族も「着衣人類の響子とは、知らない仲ではないから」という理由から、ゴキブリ人類の救援要請を受け入れた。

 軍医タコが言った。
「決まりですね……源サンは、他の協力してくれそうな者たちに声をかけて集めてください……わたしの方から【地球人強制進化プロジェクト推進委員会】の家畜三柱宇宙人に、救援協力者を運搬するための、大型宇宙船要請を出しておきます」


 こうして軍医タコ一行は、エデン・シンドロームを発症した響子と看病役の尻目をタコ型宇宙船に残して、小型タコ型宇宙船で赤いゴキブリ星へと向かった。


[前戯へ][後戯へ]

9/70ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!