エデン・シンドロームA

 そう言うと、軍医タコは床に魔法円を描き呪文を唱えた。
「エロエロなエッサイム……我は求め訴えたる来たれ! 邪神ニャ○ラト……」

 軍医タコの言葉が終わる前に、魔法円の中から大量の白煙が渦を巻き煙の中から咳き込む女悪魔の『黒夜美』が出現した。

「けほっ、あのスモーク店の親父、売れ残りの中古スモーク安売りしやがった……あたしは邪神じゃねぇよ! そんな陳腐な呪文で召喚される前に出てきてやったよ……なんか用かタコ!!」

「ずいぶんと不機嫌ですね」

「あたり前よ、こちらの都合無視で呼び出される悪魔の身になってみろ……まぁ、あの隊長とかいうタコ野郎に呼び出されるよりは、軍医のあんたの方がマシだけど……最初に言っておくけれど、魔力で願いを叶えるとかは無しだからね」

「わかっていますよ、少し悪魔の知恵をお借りしたいので、お呼びしました」

「ほうっ、軍医タコのあんたでも、わからないコトがあるの……何を知りたいの?」

「響子のこの症状を、どう見ますか」

 黒夜美は、震えている響子をじっと観察してから言った。

「エデン・シンドロームね……着衣人類が発症したからパターン青の変異種U型かも知れない……ずっと、裸族人類と接していたから体質に変化が現れたんじゃない」

「やっぱり、そうでしたか治療方法は?」

「医術に詳しくない、あたしみたいな三流悪魔に、それを聞くか」
「悪魔図書館に出入りできるのは、悪魔と悪魔に魂を売った人間だけですから……この場で隊長の魂を持って行ってもらってもいいんですが、さすがに図書館に入館するためにだけに隊長に死んでもらうのは忍びないので」

「ちょっと待っていろ……調べてくる」

 そう言い残して魔法円の中に消えた黒夜美は、しばらくしてまた白煙とともに現れた。

「けほっ、ポリエチレンを燃やした煙は目にしみる……ほらよ、悪魔図書館の書庫に保管されていた、古代の予言書『四界文書』の中に記されていた、エデン・シンドロームに関係ありそうな箇所を書き写してきたわよ……館外持ち出しも、コピーするのもダメな禁書だったから」

 軍医タコは黒夜美から手渡された、メモの内容を読み上げる。

「【……に近づきし天の『赤き遊星』、緑の大地を走る『黒き忍ぶ民の里』、蒼き深海より目覚め浮上する『白き霧の死者の船』……楽園を追われし者たちの病を癒しピンクの妙薬、かの三地に……】」

「その文章の前後は、破損がひどくて悪魔でも読めなかった」

「感謝します……でも、いいんですか? コピーするのもダメな禁書の一部を書き写してきて……悪魔の規定とかに違反するんじゃ?」

 黒夜美は、軍医タコの言葉に、ここぞとばかりの悪い笑顔で。
「バレなきゃ違反じゃないんですよ」と、言った。

 数分後……軍医タコが思案している後方では隊長タコが、小さな子供を膝の上に乗せて躾るみたいに触手で黒夜美のお尻を「悪い子は、お仕置きだべぇ」と、言いながら、ペチペチと触手で叩いていた。

 叩かれている黒夜美は「あんっ、あんっ、ごめんなさい、ご主人さま」と喘いぐ。

 軍医タコはメモに書かれている【……に近づきし天の『赤き遊星』】に注目する。

「響子のエデン・シンドローム発症は偶然でしょうか? いや、おそらく赤き遊星の影響も多少は」

 軍医タコは、響子に目を向ける。響子は毛布を裸体に羽織って、自分が裸であるコトの羞恥に震えていた。

 エデン・シンドロームが発症してしまった響子を見て、裸のエスが軍医タコに質問する。

「わたくしは、エデン・シンドロームの症状を初めてみましたけれど……わたくしたち裸女に発症する危険はありませんの? 感染とかは?」

「う〜ん、どうでしょうね……原因がはっきりしていない病気ですから、できる限り早い段階で治療した方が良さそうですが」



[前戯へ][後戯へ]

7/70ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!