現れし者Aついに出現!例のアレ?ここからラストまで、あなたが期待するようなエロシーンほとんどなし!?

 あやしげな円の中から白い煙が噴出して、ムセる女性の声が聞こえてきた。

「けほッけほッ、ケムい……出現のスモーク多すぎた。なんで出てくる側から召喚呪文唱えなきゃいけないのよ……呼び出す側が唱えるのが常識でしょうが、ったく最近の召喚者は」

 煙を手で振り散らかして現れたのは、スラッとした手足……背中まで伸ばした黒髪、頭には二本の捻れた角、背中には黒いコウモリの羽があり、先端が↓型の黒い尻尾を生やし。

 腰と胸には極布の黒いマイクロヒモ水着を着て、黒いロングブーツを履いた女性が顔をしかめながら立っていた。

 現れた女性は女体村の女医『夜美』の顔をしていた。

 夜美の顔をした例のアレが言った。
「黄金のキ○タマを七つ集めた物好きはあんたたち? よくもまぁ、あんな恥ずかしいモノを集める気になったわね」

 現れた女を見た美久が言った。
「悪魔!? 例のアレって悪魔のコトだったの!?」

「そうよ、まさかキ○タマ七つで、神の龍が出てくるとでも思っていた?」

 軍医タコが夜美の顔をした女悪魔に質問する。
「その姿は? なぜ夜美さんの姿を?」

「悪魔はどんな姿にもなれるけれど、召喚者が恐怖しないように相手の記憶を読んで、この姿を選択したのよ……いきなり、おぞましい怪物の姿で出て、呼び出した相手が気絶されても困るからね……言っておくけれど、どんな姿にもなれるからって。形容しがたい、這い寄る混沌みたいな存在じゃないからね……願いは何? 叶える願いは一つだけだから」

「悪魔なら、三つくらいの願いを叶えてくださるのでは? 夜美の顔をした悪魔さん」

「面倒だから『黒夜美』でいいわよ」
「では、改めて黒夜美さん、叶える願いはなぜ一つだけ?」

「純朴な人間が多かった時代の悪魔なら、三つくらいはサービスで叶えていたんだけれどね……最近は悪魔を呼び出す人間も強欲で狡猾な人間が増えてきて、とんでもねぇ願いとか。しょーもない願いを言う人間が増えたから、叶える願いは一つだけに改正されたのよ……あっ、忘れていた。あんたたち素人の召喚者みたいだから、この誓約書に血液でサインして」

 そう言って、黒夜美の悪魔は皮の誓約書〔せいやくしょ〕を軍医タコに渡した。

「別に紙が貴重だった中世と違って、今の時代は獣の皮の誓約書でなくてもいいんだけどね。サインが消えない筆記具だったら血液でなくてもいいわよ、サインペンでも構わないから……規定と言うか、ちゃちゃと気にしないで名前書いちゃって」

 渡された誓約書に目を通しながら、軍医タコが訊ねる。
「誓約書には『願いを叶えるにあたって、一名の魂を死後、譲渡することを承諾する』と、ありますが」

「あぁ、そこの項目ね……別にあたしたち雇われ悪魔は魂なんて無形のモノ、欲しくはないんだけれど……高度な召喚者だと『死んでも魂なんか渡さんぞ! 黙ってオレに従え!』って、強引に召喚した上級悪魔を働かせたりするんだけど……あんたら、素人召喚者みたいに手続きができない人間には契約代行人の悪魔が面倒な手順を代行してくれるから……魂はその手数料よ」

「そうだったんですか、署名するのは誰でもいいんですか?」
「誰でもいいわよ……犬とかニワトリみたいな動物でなかったら、知能がある生き物でね……念のために言っておくけれど、体から出たモノならなんでもいいからって精液や愛液でサインはやめてよね……以前、バカな人間がいて精液でサインした奴に辟易〔へきえき〕したから」

「ちょっと、待っていてください」

 そう言って外科執刀を取り出した軍医タコは黒焦げになった隊長タコに近づくと「でぇぇいッ!」と、触手の一本を切断して滲み出てきた体液で、隊長の名前をサインした誓約書を悪魔に渡した。

「このサインした者の魂を、ご自由にどうぞ」


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あきゅろす。
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