サイドストーリー【実験群島の人間島はこうして誕生しました】@エロシーン少しだけあり

 西暦20XY年……地球近くの宇宙空間を進む一隻の大型軍事宇宙船があった。

 船内には地球人の若い男女の戦闘乗組員たちが、焦心しきった表情で乗っていた。

 ある者は戦いで傷つき、ある者は性的屈辱を受けて気持ちは沈んでいた。

 宇宙船の操縦室で艦長の男性が、テーブルを拳で叩いて怒鳴る。

「どうして、同じ地球人なのに奴らはゴキブリ野郎の味方をするんだ!! あの『裸族人類』ってなんなんだ!!」

 近くにいた副官の女性が呟く。
「しかたがないですよ……まさか、同じ宇宙空間に別の地球が存在していたなんて、誰も知らなかったんですから……はぁ、それにしてもあの銀牙って名前の裸族人類男性の裸体……すてきだったなぁ、男の裸が見放題のあんな人類がいたなんて……うふふふふッ」

 赤い星で見た裸族人類の肉体を思い出して、惚けている副官女性の胸ぐらを艦長の男性はグイッとつかみ立たせた。

「しっかりしろ! そんなに裸の男が見たかったらプロレスか相撲でも観戦しろ! 全裸で外を歩き回っている連中の感覚は異常なんだよ! オレたちの地球で裸で歩いていたら逮捕されるぞ……それにしても、ゴキブリ人類からのSOSを受けて、タコ型の宇宙船で助けに来た、タコ宇宙人とか平安貴族の巨人とか、虫を操る小人姉妹とか、二足歩行で喋る狼とか、体の半身が機械の男とか、ゾンビの女拳法家とか、黄金色に輝く平面人間とか、男のかぐや姫とか、妖怪裸女とか、あいつらいったい何なんだ!? 通信機が壊れた今、早く本星の地球に帰って、別地球の存在を知らせなければ」

 艦長は航行責任者に指示を出す。
「このおぞましい空間から離脱するぞ! ショートワープ航行用意!」

 宇宙船は今いる空間から、少し外れた亜空間に移動した。
「裏道空間を使えば、我々の地球近くの空間に……」

 その時、操縦室の計器から、亜空間に急接近してくる、物体を感知した警戒音が鳴り響いた。

 次の瞬間……宇宙船の横側に突っ込むように、亜空間に出現したヘラクレス甲虫型タイムマシンの角が衝突した。

「な、なにが起こった?」
「時間軸空間から、外れて侵入してきたタイムマシンが本船と衝突しました!!」

 タイムマシンに弾かれ、宇宙船はナビが設定した座標外の宇宙空間に弾き出る。

 衝突したタイムマシンの後方から、赤色灯を回転させて追ってきたタイムパトロール機動隊バイク隊員の……《亜空間を侵入航行しているタイムマシン、路肩空間に寄って止まれ!! 無許可無免許で改造タイムマシンでの、違法時間航行常習犯罪者『乙姫』!! 今日こそ逃がさないぞ!!》の声が聞こえ。

 タイムパトロール機動隊のバイクは、そのまま当て逃げしたタイムマシンを追って行った。

 座標外の宇宙空間に弾き出た宇宙船は、目前に迫る地球星の海面で、巨大な海亀の背中に乗って移動している群島の一つに向かって落下していく。

 宇宙船は船首から島の密林に突っ込み、地面に突き刺さるような形で停止した。

 痛む頭を押さえて斜めになった壁床から立ち上がった、艦長が言った。
「いたたたっ、みんな無事か……負傷していない船員は、船内状況を確認。負傷者がいたら医務室……と、言いたいところだが、この傾きじゃあ無理だな」

 艦長は壁側に落ちないように必死に、航行計器にしがみついている航行責任者に訊ねた。

「ここがどこだかわかるか?」「座標は我々の地球とは別の地球を示しています……あの、裸族人類という種族がいる、過去のエロ地球かと……うわぁぁ!」

 航行責任者は斜めになった床を、壁に向かって滑り落ちて行った。
「動ける者はオレと一緒に来い、船外に出る」

 副官の女性を含む数名が、床や壁を這ってハッチから船外に出た。

 密林に突き刺さった戦闘宇宙船は、中破して飛び立つのは無理そうだった。

「いったいここはどこなんだ?」

 艦長がそう呟いた時、近くの樹の上から女性の声が聞こえてきた。

「『実験群島』の中にある、名も無き島だよ……あんたたち、あたしの島になんの用?」

 見上げると、そこには太い枝に腰かけた裸の女性がいた。
 副官が同性の裸体を凝視する。
「裸女? 裸族人類? それとも、ただの露出狂?」

 樹の枝に座っていた裸の女性は「よッ!」と言って十メーター以上の高さがある枝から飛び降りると、色鮮やかな蝶の羽を背中から突出させた……裸族人類だった。

 上がり目気味の裸族人類女性が、別地球の着衣人類に向かって言った。
「なによ、その目は……裸の女がそんなに珍しい?」

「オレたちは、裸族人類には興味ない……この島から脱出したいだけだ」

「あ、そうっ、それじゃあ。ご自由に……島を荒らさないで、勝手に出て行ってね」

 そう言い残して、裸族人類の女性は蝶の羽を羽ばたかせて、どこかへ飛んでいった。



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あきゅろす。
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