さらば【実験群島】C〔実験群島おわり〕
軍医タコがフランに言った。「フラン、久しぶりです……どうやら、ウニ型宇宙人のエロも自分が作った裸族人類と一緒に『実験群島』に来ていたようですね」
頭に包帯を巻いたケン・フランが、怪訝そうな笑みを浮かべる。
「そうなのか? すまない……なぜか、ここ数時間の記憶が抜け落ちているんだ……何か実験のようなコトをしていたような気もするが」
「その頭の包帯は?」
「どうやら、強盗に襲われたらしい……薬品や発明器機が盗まれていたから、地下室に通じる穴を掘られて、そこから侵入されたみたいだ」
「そうですか……それは災難でしたね」
フランに姉のシロンが詰め寄る。
「フラン、姉として一言あなたに言いたいコトがある」
「なに? 顔色が悪いシロン姉さん」
シロンは大きく深呼吸をしてから、フランに言った。
「お風呂に入った時は、ちゃんと耳の後ろも洗いなさい……それから苦手なニンジンと、ピーマンもちゃんと食べなさい……風邪が流行している季節には、学校から帰ったら手荒いとウガイを……」
シロンのゾンビ脳は少し麻痺して、鈍くなっていた。
姉の言葉に乙姫にブッ飛ばされて、少し頭の中に霧が漂っているフランが答える。
「うん、なんとなくわかった……で、シロン姉さん……どうして、そんなに顔色が悪いの? 裸なのはどうして?」
軍医タコが触手を伸ばして、奇妙な言動が続くフランを診察する。
「どうやら、強盗に襲われたショックで、過去の記憶も断片的に抜け落ちて……マッドな才能も一部分が忘却され、非凡なマッドサイエンティストになってしまったみたいですね」
今度は夜美が一歩、フランに詰め寄る。
「教授、あたしのコトは覚えています」
「もちろんだよ、助手だった夜美くんじゃないか……陰核で真珠養殖ができるように手術したよね、どうだい一回目の真珠は採取できたかい?」
「ちゃんと採取できて、二回目のクリ真珠が順調に育っていて……って、何言わせるんですか! こんな変な体に改造して……まっ、女体が作るクリ養殖した真珠は珍しさから高額で売れるから、一年分の収入源にはなっていますけれど……そんなコトより、いったい誰を復活させようとしていたんですか? 豊胸手術をしたのは女ですか? 男ですか?」
尻目が夜美の言葉にツッコミを入れる。
「さすがに男の体に豊胸手術はないんじゃ?」
「教授なら男にだって、やりかねない……未知の生物とか動物の体に、人間の脳髄移植するコトだって可能な人なんだから……いったい誰を復活させようとしていたんですか、答えてください」
「いやぁ、思い出せないんだ……なんとなく、思い出すと弾丸が飛んでくるような恐怖を感じて……ところで夜美くんと、毎晩ベットで励んで作った十ニ人の子供は元気かい? サポーターを一人含んだサッカーチームか、野球チームを作ろうと二人で子作り頑張ったよね」
夜美が顔を真っ赤にして怒る。
「そんな事実はない! 自分に都合がいいような記憶の改ざんするな!!」
二人のやりとりを聞いていた軍医タコは「やれやれ」と、肩をすくめて言った。
「どうやら、実験群島に留まる理由は、黄金のキ○タマが無くなった今はなくなりましたね……危惧していたような危険レベルの研究や実験を、ケン・フランはしていないみたいですし……次はどこの場所を探したらいいものやら、情報不足です困りましたね」
そう呟いて、軍医タコは壁に掛けられていた『実験群島』の海路図を眺めた。
【実験群島】おわり
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