ゾンビの町と『マンドラゴラ』の収穫祭@

 ケン・シロンの方も歩きながら、軍医タコに自分や身内のコトを話しはじめた。

「あたしには、北斗珍拳継承者で『裸王』と名乗っている義姉がいるんです……裸王は着衣人類ですけれど一年を通して全裸で過ごしている、露出狂の姉です

 ケン・シロンの話しだと裸王は周辺の、ならず者たちを集めて裸王軍なる変態軍団を作り上げると。
『性器末覇者』となるべく、民衆を露出の変態行為で支配して天下取りに乗り出した。

 ケン・シロンが拳を握り締めて言った。
「裸王は、着衣人類の民衆に全裸になるコトを強要して、裸の頂点に立つ野望の為に進軍を開始しました……フルチンで迫って来る裸王軍に、ある婦女子は悲鳴をあげて逃げ出し、ある婦女子は狂喜しました」

「その露出狂たちの進軍を止めるために立ち向かったのが、義妹のケン・シロン……あなたでしたね。ケン・シロンと裸王の壮絶な闘いは人々の記憶に残り、二人の名は世間に知れ渡りました」

「裸王の最後は『我が生涯に一片の衣服必要なし!』と豪語して、全裸で立ったまま昇天しました……あっ、この場合の昇天というのは。オナって絶頂しちゃったって意味ですけれど……ちなみに裸女の『乙姫』が、着衣人類の『裸王』を、高慢な態度で部下にしてやるとスカウトに訪れましたけれど。裸王に一睨みされて逃げ帰りました……話して歩いている間に、ゾンビの町が見えてきましたね」

 到着した『ゾンビ町』は、南欧〔プロヴァンス地方風〕な建物が並ぶ町だった。町にはゾンビたちが溢れ、ゾンビ祭りなのか? 町は活気に満ちていた。

 シロンが近くをヨタヨタと歩いてきた、南仏の民族衣装を着た、顔色が悪いゾンビ娘を呼び止めて訊ねた。

「もしかして、これは『マンドラゴラ』の収穫祭ですか?」

「はい、シロンさん……一年に一度の収穫祭です、そちらのタコさんは?」

「軍医タコさんです……あるモノを探しているそうです」

「軍医です、盛り上がっていますね……ゾンビの町だと聞いて、もっと荒廃した感じの暗い町を想像していました」

 ゾンビたちが溢れる町では、3on3のバスケットボールに興じている若者ゾンビや。ストリート・スケートボードを楽しんでいるゾンビや。ストリート・ダンスをしているゾンビがいた。

 さらに公園の方に目を向けると、屋台のテント村ができていて。公園内を元気にジョギングをしている老人ゾンビや、半分白骨化したゾンビ犬を散歩させているゾンビもいる。

 ゾンビ娘が言った。
「ゾンビは体を動かさないと、血液や筋肉が固まってしまうので日頃から運動するように推奨しているんです……時には、激しすぎる運動で頭とか手足が抜けたりもしますけれど」

 三対三のバスケットボールをしている若者ゾンビが、相手チームの一人の首をもぎとってシュートしている光景に軍医タコは納得してうなずいた。

「道理で、みなさん死んでいるのに生き生きとしていますね……それにしてもゾンビなのにどうして、あなたはそんなに流暢に喋れるのですか? 本来、ゾンビなら脳の活動も停止していて人としての意識も無く、欲望のままに生者を襲うイメージがあったのですが?」

「数年前までの、あたしたちはそんな下級ゾンビでした……人としての意識も無く、人間を襲って食べているだけの凶暴なゾンビでした。彼女の血肉を食べるまでは」

 ゾンビ娘が指差した広場の中央には、トンガリ帽子を被った魔女の裸婦像があった。

「元々、このゾンビ島は群島の中で死者を埋葬する墓場島なんです……死者復活の実験に適している島ということで『錬金術』の魔女や術師が、昔は島の所有者でした……魔術実験で、ゾンビが増えすぎてしまい島にいた大半の術師や魔女たちは、手に負えなくなったゾンビを放置して島から去って行ったんですが……一人だけ島に残った魔女がいて

「それがあの、裸婦像の魔女ですか」

「はい……島を脱出する能力がなかった見習い魔女で、仲間の魔女からは『邪魔魔女レミファ』と呼ばれていました」



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