【ゾンビ島】A〔北斗珍拳伝承者ケン・シロン〕登場
ヨダレを垂らしながら歩み寄ってくる、ゾンビたちに身の危険を感じた軍医は、隣にいる隊長の体に塩コショウをパラパラと振りかけた。
「なんのつもりだ軍医?」
「ゾンビさんに、少しでも美味しく食べてもらえるように下味をつけました」
「なんだと!?」
口を開けた雑魚ゾンビが襲いかかる。
「タコぉ、喰わせろぅぅ!!」
軍医タコは迫り来るゾンビに向かって、隊長タコを蹴って突き出す。
「隊長出番です、隊長の犠牲は無駄にしません」
「軍医きさまぁぁぁ!! うわあぁぁぁぁ!!! ぎょえぇぇぇ!!」
隊長タコに群がる雑魚ゾンビ……ブチッブチッと、触手が引き千切られている音を背後に聞きながら。軍医タコは素早く開けた『どこでもホール』に飛び込むと、隊長タコがゾンビに喰われている惨状現場から……退避した。
軍医タコが、どこでもホールを抜けて出てきたのは、鉄条網とフェンスが続く断崖だった。フェンス外の眼下を覗くと、磯の岩肌に打ちつけて砕け散っている白波が見えた。
「緊急だったので、島の中を移動しただけですか……失敗しました、でも災難からは、とりあえず逃れるコトができて」
振り返った軍医タコの目に、タコ足をクチャクチャ味わいながら、坂道を登って近づいてくる雑魚ゾンビたちの姿が映った。
『どこでもホール』の移動距離は数十メートルしか離れていなかった。
苦笑する軍医タコ。
「わたしとしたことが、百年に一度の凡ミス……もう、どこでもホールは使えませんし……どうしましょうか」
坂道を登ってきた雑魚ゾンビのリーダーが言った。
「いきなり消えたと思ったら、瞬間移動しやがった……覚悟しろタコ、煮込んで喰ってやる」
「こりゃあ、絶体絶命ですか……さて、どうしたらいいものやら」
頭上を仰ぎ見た軍医タコは、ダメ元で実験群島の所有者……ケン・フランの名を叫んだ。
「ケ────ン!!」
その声を聞いた雑魚ゾンビたちの歩みが止まる。リーダー格のゾンビが震える声で言った。
「なぜ、その名前を知っている……あんた、アイツの知り合いか」
「兄貴、ヤバいですぜ……実はオレ、数日前から北斗七星の近くに小さい星が見えはじめていて……今、ヤツと遭遇でもしたら……ぐふッ!?」
疾風と共に、死兆星が見えた雑魚ゾンビの体が破裂して砂塵と化した。
破裂したゾンビの後ろに、目つきの鋭い黒髪の美女が立っていた……黒いレザー革のジャンパーを素肌に直接着て、両肩には鋲〔びょう〕が打ち込まれた肩当てを装着している。
下半身はヘソ出しで、下着が見えそうな黒いレザー革のマイクロミニスカートを穿いて、革ブーツを履いた、顔色が鉛色をしたゾンビ女だった。
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