実験群島B

 源サンが響子を群島の一つに落下させていた頃……実験群島本島にある、ケン・フラン教授の館では、ウニ型宇宙人『ドクター・エロ』と群島所有者の『ケン・フラン教授』の談話茶会が行われていた。

 ウニ体から伸びたマジックハンドで、コーヒーカップを持ったドクター・エロが言った。

「おまえと、こうして顔を会わせるのも久しぶりだな……卒業以来か」

「だな……卒業してから、連絡する機会も無かったからな……お互いに研究や実験に没頭していて」

 そう言いながら、ダブダブの白衣を着て、ティシャツとホットパンツ姿でコーヒーをすする、小学生くらいの少年は眼鏡の端を軽く押さえた。

 それを見たエロが言った。
「おまえも、しばらく見ないうちに若返ったな……その姿は実験の成果か?」

 少年姿のケン・フラン教授が答える。
「本来なら胎児の段階までもどすつもりだったが、この年齢でストップしてしまった……失敗だ」

「自分を実験台にするとは……まさに、マッドサイエンティストの鑑〔かがみ〕だな。オレやタコには、そこまでの度胸はない」

「タコと言えばあいつは、軍医になったんだよな……ボクたちの中で、いつも一歩先を行っていたな……『総合マッド科学科』を選択したのは、あいつだけだった」

「今でもタコには負けたくないと思って、オレは合成裸族人類のウニ子を作った……ところで、オレのウニ子はまだ。この本島に来ていないのか?」

「見ていないな……他の島にいるんじゃないのか」

「ウニ子の奴、どこで道草食っているんだ……完全体の裸体を、ケン・フラン教授に見てもらうために先に島に行かせたのに」

「この実験群島は地磁気が多少歪んでいるからな……方向感覚に影響が出る人間もいて、方向音痴で迷う者もいる」

「そうか……そう言えば学生の頃は、オレとおまえとタコの三人で組んで、よく騒動起こしていたよな」

 思い出話しにケン・フランは、懐かしそうな表情をする。
「そうそう、拐ってきた地球人の女を裸にひん剥いて、淫乱な人体実験してたよな……数時間、絶頂しっぱなしの体に女を改造したり。絶頂寸前の状態が、数時間継続する体に改造したりして……学生時代はバカやっていた」

「さすがに、絶頂しっぱなしの地球人を作ったのがバレた時は、銀河系の【地球人強制進化プロジェクト推進委員会】の方に呼び出されて、こっぴどく怒られたよな……プロジェクト発動前に目立ったコトをするなって……ケン・フランも、同じ地球人に対して、よくあんなエロエロ実験を行えたな」

「ふっ……認めたくないものだな、若さゆえの過ちというのは……マッドサイエンティストの業〔ごう〕というやつだな」

 苦笑してコーヒーを飲み干したケン・フランがドクター・エロのクリアーパーツで剥き出しの脳を見て言った。
「そのウニ脳、少しばかり分けてくれないか……解剖して研究したい」

「はははは……断る。言っておくけれどコーヒーに混入した睡眠薬は無効だからな……こんなコトもあろうかと、催眠薬が効かない薬を飲んできた」

「チッ、バレていたか……少しくらい分けてくれてもいいのに、ケチ」
「おまえの方は今、どんな研究をしているんだ?」

「教えないよ……いろいろと平行してやっているとだけ言っておく」

「ケチ」

 ドクター・エロとケン・フラン教授は、互いに後ろ手に隠し持った外科メスを光らせながら……笑った。

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あきゅろす。
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