さらば巨人の国A【巨人国編おわり】

 翌日……紫乃宮の君は、蘭花と銀牙を前に会話をしていた。

「昨夜の、ある部分の記憶がポッカリと抜け落ちています……何か花火のような音を聞いた記憶はあるのですが……とても、おぞましく下品な何かを見たような……五条中納言あなたは何か覚えていますか?」

「いいえ、わたくしも何も覚えていません」

 五条と須磨は蘭花を弄んでいた時の記憶が、すっかり抜けていた。

 紫音たちも、いつの間にかいなくなっていたので。彼らを捕まえて虫カゴに閉じ込めた記憶さえも忘却していた。

 恐るべし究極奥義『見たコーマン』の衝撃。

 ちなみに蘭花の方は「お尻の穴から口まで、丸太を突っ込まれている変な夢を見ました……奇妙な気分でしたが、気持ち良かったです」と、顔を赤らめて言った。

 十二単姿の紫乃宮の君が、蘭花たちに言った。
「そうそう、ある貴族から黄金に輝くキ○タマの情報提供がありました……あなた方が探しているキ○タマかは定かではありませんが、一応確認してみますか?」

「ぜひ、見せてください」

「すぐに用意させます」

 紫乃宮の君が両手を打つと、宮廷の使用人たちが何やら食膳の支度をはじめた。

 皿やお椀に盛られた山海の珍味と一緒に、土鍋のようなモノが運ばれてきた。鍋の中にはダシ汁の底に丸い物体が二つ、沈んでいるのが見えた……何かの動物の睾丸だった。

 土鍋が七輪に乗せられ底を火に炙られる。肉や野菜が投入されて、鍋がグツグツと音を立てはじめると紫乃宮の君が言った。

「古文書に残されていた幻の宮廷料理です……長い間、ある二つの食材が揃わなかったので。調理できずに忘れ去られていました」

 銀牙が訊ねる。
「その食材とは?」

「一つは『竜のキ○タマ』……百年に一度の希少食材で、今年は川を上ってくる竜が豊漁だったそうです」

「り、竜? 竜ってサケみたいに遡上するんですか?」

「滝を昇って竜に変わった直後の若い竜を捕まえて、玉を抜くんです」

「もう一つの食材は?」

「仕上げに加える食材で、それこそ稀有で滅多に手に入らない幻の食材で……鍋の具が煮えて柔らかくなったようなので、その具材を加えてみましょう」

 紫乃宮の君が調理人に目配せをすると、調理人は懐紙に包まれていた、裂いた干物のようなモノを箸でつまみ上げる。

 それは浜辺で最初に子供に引き裂かれた、隊長タコの断片だった。



 隊長タコの干物が鍋に入れられた途端、ダシ汁が黄金色に輝きはじめた、特に竜のキ○タマは眩いばかりの輝きを放つ。

「これが『すめらぎ皇国』幻の宮廷料理『キ○タマ鍋』です……精力がつきますよ、あなた方が探していたのは、この黄金のキ○タマ鍋ですか?」

「違うようです……残念ですけれど」

「そうでしたか、やはりこの国には無かったのですね……では我々でキ○タマを食するとしましょう……裸族人類と『すめらぎ皇国』の友好の宴です」

 そう言った後、紫乃宮の君は銀牙に小声で「また、この国を訪れた時には、紫乃宮の体を弄んでくださいね」と呟くと、笑顔で片目をつぶって見せた。


【巨人国『すめらぎ皇国』編】おわり

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