機械島@


 白い翼で飛びながら、蘭花が軍医タコに訊ねる。

「二号神さまの知り合いの『機械化男爵』って、どんな人なんですか?」

「元々は着衣人類なんですけれど……メカとか機械が大好きで、自分の半身を機械に変えてしまった人です」

「その人から、タコ神二号さまへ『生きている機械城』への招待状が届いたんですね」

「えぇ、招待状には『輝くキ○タマを見つけたから遊びに来てくれ』と、書き添えてありました……でも」

「でも? なんですか?」
「機械化男爵が自分の城に招待する時は、たいがい厄介事が発生している時なんです」

「それで、タコ神二号さまも同行を」

 そうこうしているうちに、眼下に広がる海原の一点に浮かぶ、円筒形の孤島が見えた。

 断崖に囲まれた、島の形はまるでショートケーキのホールが丸ごと海の上に置かれているようだった。

 円筒台地の上には、森や池や川や草原や畑があり、流れる川の水は断崖から海へと滝になって流れ落ちている。

 島の中央にある富士山のような形をした山の頂上に、西洋の古城が建てられているのが見えた。

 リアカーを引いている源サンが、懐かしんでいるような口調で言った。

《あの機械島は、オレっちの生まれ故郷なんでさ……帰郷するのは何年ぶりか》

 空飛ぶチンチン君が言った。
《ボクもなんだか、あの島には懐かしさを覚えるっでしゅ》

 軍医タコが言った。
「機械系の者たちにとって、機械化男爵の機械城は、第二の故郷……心の故郷ですからね、懐かしさを覚えるのも当然でしょう。70年代機械裸女たちとか、アニロボ裸女たちとかの……ちなみに、チンチン君の記憶メモリーチップには、あの島で栽培されたチップが使われています」

「栽培された?」

 源サンが引くリアカーは島の外れにある畑に着陸した、畑には源サンとそっくりなロボットが、金属製の錆びた切り株に腰を下ろして一服しているのが見えた。



 自分と同じ姿のロボットに近づいた源サンが、親しそうに声をかける。

《よっ、源イチ……元気だったか》

 話しかけられたロボットは、いきなり近くにあったクワを手に立ち上がると、源サンに襲いかかった。
 鍬は源サンの足元の地面に突き刺さる。
《うわっ、危ねぇ! 何するんでぇ! 源イチ》

《何ノコノコ帰ってきただ! 島を捨てて出ていった者が! ボルトの実やナットの実の収穫期に手が足らなくて、村は大変だったべ!》

《そりゃあ悪かった、銀○鉄道がこの島の駅に立ち寄るのは、年に一度だけだったから……その機会を逃したら、島から外の世界へ出るのには一年間待たないといけなかったからな》

《そんな言い訳は聞きたくないべ! 銀○鉄道の列車なら三日前から島の駅に停泊しているべ……源サンは勝手に島を出て行ったべ》

 源サンと源イチがそんな会話をしていると、源サンとそっくりなロボットがゾロゾロと集まってきた。

 背中に5の数字が書かれたロボットが言った。
《なんだ源イチの怒鳴る声が聞こえたから来てみたら、源サンじゃないか》

《おおっ、源ゴ……いいところに来た、助けてく……れ》

 ロボットたちは、源サンの言葉が終わる前に鎌とかフォークの農機具を持って、叫びながら源サンに襲いかかってきた。

《このぅ、農繁期の忙しい時期に、島から逃げ出した裏切り者がぁ!!》

 ロボットの中には、名状しがたいバイブのようなモノを持って追ってくる者もいる。

《ヤバい!?》
 源サンは慌ててリアカーを引くと、地面を疾走して逃げ出し、蘭花たちもなんとなく一緒に逃げ出した。

 森の外れまで逃げてきた源サンは、額に吹き出たオイルの汗を拭う。
《ふーっ、ここまで逃げてくれば、大丈夫》

 リアカーから降りて響子が言った。

「よくよく考えてみれば、あたしたちまで逃げるコトは無かったですね……機械の城から離れちゃいましたね」

 響子に続いてリアカーから、ヌチュと滑り降りてきた軍医タコが言った。

「しかたがないですね……源サンの量産タイプが住んでいる村を迂回して、機械城に向かいましょう……源量産タイプは人間やタコに危害を加えることは無いとは思いますが……源サンと一緒に居るところを見られていますからね、村の道を通るのは、心情的に良く思われないでしょうから」

 軍医タコが源サンに言った。「源サンは、どこかに待機していてください。わたしたちがキ○タマを探し終わったら迎えに来てください」

《面目ねぇ、まさかこんなコトになるとは》



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