女鬼の宴B【童話の町】完結


 一瞬、浴びた電撃によろめきながら、妖気妃は不敵な笑みを浮かべて倒れることなく踏み留まる。

「効かんなぁ……その程度の攻撃、今度はこちらの番だ」

 妖気妃は両目を閉じる、危険を感じた女桃太郎が叫ぶ。

「ヤバい! あの女と目を合わせるな!」

 勝利を確信して高笑いする、妖気妃。
「あははは……もう遅い!」

 妖気妃には、ある特殊能力があった。それは目を合わせた相手に自分の魂を移動させて、他人の肉体を『乗っ取る』という憑依能力だった。

(本当は、強くて白い翼を持った蘭花の肉体を狙っていたが……今はとりあえず、美久の体で我慢しておいてやる。美久の飛行方法は足の裏から炎を吹き出して、見映えが悪いから嫌だが……今いる裸族人類は、美久だけだからな)

 妖気妃は、カッ! と、両目を見開いて美久の方を見た。

「エビ側とカニ側のハイブリット裸族人類、美久! おまえの肉体を頂戴するぞ! 奪った後に自分で自分の体を蹂躙してやる!」

 目を開けた妖気妃の視線の間近に目があった……横に無数に並んだホタテ貝の目が。ホタテ貝は貝ヒモの部分に六十〜百以上の目を持っている。

 美久は両目を閉じた状態で、開いたホタテ貝を妖気妃に向かって「ほいっ」と見せていた。

 思わずホタテの目に叫ぶ妖気妃。
「目が! 目が! へっ!?」

 ホタテ貝の方に魂が移動して脱げ殻になった妖気妃の肉体が、その場に顔面から倒れる。

 美久は目を閉じたまま、ホタテ貝をヒモでグルグル巻きにして開かないようにしてから。

「飛んでいけぇぇ!!」と、山奥に向かって、妖気妃の魂が入ったホタテ貝を放り投げた。

 一同が唖然とする中……響子は、昇ってきた朝日を受けて、手の中でキラキラと輝いているキ○タマを恍惚とした表情で眺めながら。

「二個目のキ○タマ、ゲットしましたぁ」と、言った。


 そして……響子たちが童話の町の童女たちに別れを告げ、黄金のキ○タマを持ってタコ型宇宙船に帰ってから数日後……童話の町の山奥には地面に突き刺さって、人知れず腐敗が進行しているホタテ貝があった。


【童話の町】おわり

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あきゅろす。
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