女鬼の宴@

「鬼が出てくる昔話……桃太郎? 一寸法師? 瓜子姫に登場する天の邪鬼も一応は鬼だけど……ジャックと豆の木に出てくるのは、人喰い鬼だったっけ? ヘンゼルとグレーテルに出てくるのは、鬼じゃなくて魔女だったかな?」

 響子が考えていると、茂みの中から性格が悪そうな一人の裸女が現れた……旧名・乙姫だった。

 乙姫が響子に向かって怒鳴る。
「ちょっと、あんた!! なに、裸のバカ王子の気を引こうとしてんのよ!! あの変態王子が着衣人類のあんたを花嫁に選んだら、あたしの計画に支障が生じるんだからね!!! 少しは考えなさいよ」

 響子は、旧名・乙姫の顔を凝視する。
「誰っ?」

「あたしを知らないの……あんた、バカァ? 聞いて驚け!! あたしの旧名は『乙姫』………今の通り名は」

 ここで、裸の乙姫は胸を張ると、誇示するように言った。

『妖気妃』!! よ──く、覚えておきなさい……ハッ!?」

 銃声が響き、額に銃弾が直撃して、のけぞる妖気妃。
「あっ、べっしっ!」

 樹の蔭から裸赤ずきんに従う、裸猟師が猟銃を構えて立っていた。

 狙撃された妖気妃が、撃たれて赤くなった額を擦りながら赤ずきんに向かって怒鳴る。

「アホか!! あたしは口封じしなくていいんだよ! チッ! ここぞという場面で公表してビビらせてやろうと、今まで隠してきた新しい名前を、思わず言っちまったぜ……しかも、着衣人類一人の前で……妖気妃と」

 また銃弾が妖気妃の額に命中する。

「ひっ、でぶっ! もう秘密にしないでいいんだよ!! 口封じはやめだ!! あたしを撃つな!!」

 妖気妃は、響子を怒りの形相で睨み指差す。

「全部、おまえが悪い! 覚悟しろ、着衣人類の女」

 妖気妃は茂みの中に隠してあった、名状しがたいバイブのようなモノを取り出して響子に迫る。

 名状しがたいバイブのようなモノを見て、恐怖に後退する響子の樹上から、のんびりした声が聞こえてきた。

「にゃ、ピンチそうだにゃ」

 見上げると、そこには樹の太い枝に座って股を開いて、性器を舌で猫のようにナメナメしている、長靴をはいた裸猫の姿があった。

 樹の上から飛び降りてきた裸猫は、響子の横に着地する。

「にゃ、乙姫にゃん、久しぶりだにゃ」

 妖気妃は、現れた裸猫を見て、さらに怒りを高めた。

「裸猫……この裏切り者が!」

 尾骨の末端から生えている猫の尻尾を振りながら、裸猫が答える。

「裏切ったワケじゃないにゃん……大戦の時は渋々、協力していただけにゃん……乙姫にゃんが勝手に仲間だと思っていただけにゃん」

「あたしのコトを乙姫と呼ぶな! 新名解禁して今日から『妖気妃』……」

 額に命中する銃弾、名状しがたいバイブのようなモノを手に裸赤ずきんに向かって怒鳴る妖気妃。

「撃つなと言っているだろうが!!」

 響子が裸猫に助けを求める。
「ねぇ、助けてよ……相手が、あんな名状しがたいバイブのようなモノを持っていたら、やられちゃうよ」

「しかたがないにゃ……」

 裸猫が両の手をパンッと打ち鳴らすと、魔法円が手と手の間に出現して、魔法円の中から紅い表紙の魔導書〔魔本〕が出現した。

 それを見て慌てる妖気妃。
「や、やめろ! その魔本を開いて書かれている呪文を唱えるな!」

 裸猫はお構い無しに、開いた魔導書に書かれていた呪文を唱える。

「フザケルニャ!!」

 突然、響子が白目を剥いて「あがっ」と、人形のように開けた口から稲妻が妖気妃に向かって飛ぶ。

「うぎゃあぁぁぁッ!!」

 電撃の直撃を受けて気絶する妖気妃……高圧電流は着衣人類なら即死、裸女は気絶する程度、裸族人類には無効。

 裸猫が紅い魔本を閉じると、響子も黒目にもどり、人形のように開いていた口が閉じた。

 響子は両目をパチパチさせながら、首をかしげる。

「あたし、今なにを?」

 裸猫が言った。
「気にしないにゃ、早く黄金色のキ○タマが出現する鬼の宴に行くにゃん、場所はあたしが知っているにゃん」

 長靴をはいた裸猫と響子は、女鬼の宴が行われる山中へと向かった。

 響子と裸猫が鬼の宴の場に向かっていた頃……美久も同じ場所を目指して胴体で月夜の海上を回転飛行していた。

(早く、みんなに合流して妖気妃の特殊能力を伝えないと……と、その前に妖気妃に対抗するためのアレを探しておかないと)

 美久は海中へと急降下すると、しばらくして海上へと飛び出してきた。

(とったど──っ!!)

 手足を引っ込めた穴とマ○コの穴から炎を吹き出しながら、スピードアップした美久は宴の場へと急いだ。

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