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トウコ視点。




「……トウコ、ごめん。俺行ってくる」

「え、ちょっ、トウヤ!行くって何処に!私達約束したよねっ、一区切りついたらカノコタウンに帰って、一緒に違う地方に旅するって!」

私が感じた不安。それはトウヤが何処か遠い所に行ってもう二度と会えないかもしれないという不安。

前々からトウヤは何か考え込んでいて、私はそんなトウヤを見る度に確認を取っていた。
「トウヤは何処にも行かないよね、一緒にカノコタウンに帰ってまた旅しようね」
そうでもしないと彼はすぐに自分の前から消えてしまいそうだったから。


「ごめん、アイツには俺しか居ないから。俺がアイツを見つけてやらないと、アイツのそばに居てやらないと。きっとアイツは今も何処かで待ってるから。」

「ト、ウヤ…」

初めて見る表情。従兄妹のに、幼なじみなのに、こんなにも真剣な顔をした彼を私は初めて見た。でも、私だってトウヤしか居ないのにどうして消えたアイツを追うの。従兄妹で幼なじみの私だってアナタしか居ないのに、どうして会って間もないアイツを追うの!


「トウコにはベルもチェレンも居るだろ?」
ベル、チェレン?
そんなのは要らない、望んでない。彼奴等もトウヤを求めてる、私の大っ嫌いな幼なじみ。


「あんなのはどうだっていいのっ、私は、私はトウヤが一番なの!トウヤしか居ない!」

トウヤを困らせてる?別に彼が私のそばに居てくれるなら嫌われたって構わない。トウヤの為ならなんだってしてあげる。ただ私のそばからは放してあげないけれど。


「…トウコ、きっと帰ってくるから…」
アイツを連れて?

Nを連れて帰ってくるの?世界で一番嫌いな、私からトウヤを奪ったNを連れて帰ってくるの?嫌だ。

「Nは可哀想な奴なんだ。俺がそばに居ないと壊れてしまうから。きっとアイツを見つけて一緒に帰ってくるよ、だからトウコもアイツと友達になってあげて」

嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌!

ねぇトウヤ気付いてる?私だってトウヤが居ないて壊れてしまうのよ。あぁもう手遅れかもしれないけれど、アナタが居ないと気が狂ってしまう。

友達、なんて無茶な話だろうか。Nが消えたのはトウヤが自分を追ってくると知っていたからなのに。アイツのトモダチなんて、ポケモンだけでイイじゃない。



「じゃ、…行ってくる」

「待っ…て」

気持ちの半分も言えなかった。全部、私の全部を言えたら彼は此処に居てくれた?分からないけれど、唯私の頬を滑る涙の冷たさと彼のポケモンが巻き起こした冷たい風が私にこれは現実だと言い聞かせてくる。

伝説に乗ってる彼を見て、私が選ばれてたら彼はアイツを探しに行かなかったのかなと考える。私が英雄になれたら、彼とアイツの接点は少なくなってたかな、と。でも私は選ばれるような人間じゃないし、彼は英雄に相応しい人間だから。こんなのは唯の私の後悔だ。私が全てを伝えいなかったから、彼がアイツに出会う前に私が彼の心を掴んでたらこうなったのだから。それを後悔しない訳がないだろう。


「ぁ、あぁあああぁああっ!!」

叫ぶ。私の後悔を乗せて、叫ぶ。声が枯れたって、喉が潰れたってどうでもいいの。悲しみと虚しさ、絶望を抱いて、私はこれからどうやって生きていけばいい?
きっとアイツが「帰りたくない。」その一言を言えば彼は帰ってこないだろう。彼はアイツにどこまでも甘い。幼なじみより、従兄妹より、何よりも彼はNを優先するから。

また考える。もし私が幼なじみでも従兄妹でもなく、もう少し遠かったら好きになっていてくれたかな。幼なじみ、従兄妹、それは近すぎて遠すぎたんだ。彼の事を知った振りして何も知らなかった。彼もきっと私の事を何も知らなかっただろう。きっと今も知らないまま。私がこんな事考えてるなんて思いもしないのだろう。

あぁ、涙が止まらない。
彼に追いつきたくて、彼の隣に居たくてバトルだって強くなった。ポケモンもかなりのレベルになった。彼には到底追いつけなかったけれど。あぁあああぁあ、彼が居なくなったならポケモンだって意味が無いじゃないか。








私の世界から色が消えた日。
私の存在理由が消えた日。
私の涙が枯れ果てた日。
私の中で何かが千切れた日。


彼が、消えた日。














告白さえさせてくれなかったけど、私は確かに彼を愛してた。
いや愛してる。




私が消えたら彼は追ってくれるかな、探してくれるかな。
僅かな希望を持って、
サヨナラ私の世界。大好き、愛してるよトウヤ。



トウコは目の前が真っ暗になった。▼


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