短編 ワン★ダフル DAY(ボカロ/カイメイ) 「見て見てめーちゃん!犬!」 拾っちゃった、とカイトは嬉しそうに笑った。 「拾っちゃった、って…あんたね」 「ほら、可愛いでしょ?」 「確かに可愛いポメラニアンだけど」 「これポメラニアンなの?可愛いなぁ」 可愛い。確かに、カイトの拾ってきた犬は可愛かった。でも問題は可愛いか可愛くないかではない。 カイトは分かっているのだろうか。 動物を飼うと言うことがどういうことなのか。 それにしても良くなついている。 「んー、名前。名前どうしよう。…めーちゃんめーちゃん!可愛いからメイコにしようか!」 「ぶっ!!あ、あ、あんた何言ってんの!大体、ややこしいでしょうが!」 「でもちょっとめーちゃんに似てるし…ね?メイコ」 気に入ったのか『わん!』と元気に鳴いた、犬のメイコを嬉しそうにカイトは撫でてやる。 ふーん、そう。メイコ。メイコねぇ。 ………って何考えてるのかしら、私は! 「あはは、めーちゃん見て!チューされちゃった」 「はいはい、可愛いわねー」 「うん、可愛い!」 それからカイトとポメラニアンのメイコは、仲良くずーっと遊んでいて。 何よ、カイトってば。 私の方ちっとも見ないじゃない。 「あ、見て。メイコ寝ちゃったよ。…可愛いな」 「……そうね、本当に可愛いわ。メイコは。私と違って素直だし」 「へ?」 「愛嬌だってあるし?そりゃあ、私よりずっと可愛いでしょうね」 ああもう、私は本当に何を言っているんだろう。 カイトがぽかんとしているのがわかって、余計に恥ずかしくなる。 「えっと、」 「チューとか言ってデレデレするし」 「あの…めーちゃん?」 「その呼び方だって!何よ、私のことはめーちゃんなんて子供っぽい呼び方なのに、なんで犬はメイコなのよ!バカイト!!」 「…もしかして、やきもち?」 「ち、が、う!」 ……違わないけど。 なんか悔しいじゃない。情けないし。 「ごめんね、……メイコ。この犬が、めーちゃんみたいに可愛いから、名前をメイコにしたけど、僕にとって一番可愛いのも、一番大好きなのも、めーちゃ…メイコだよ?」 なんて、真っ直ぐ私の目を見て言ってのける。こう言うところは、少しだけ尊敬してしまう。 「…いつも通りでいいわよ。似合わないから」 「本当?嬉しいな。めーちゃんって呼び方可愛いから、可愛いめーちゃんにぴったりだと思うんだ」 「………バカイト」 「はは、結局それかぁ」 後日。 メイコの飼い主が見つかり、元の家に戻って行った。 カイトは笑いながら頭を撫でてお別れをしていたけれど、やっぱり寂しそうで。 私も、ほんの少しだけ寂しかったから。 カイトの頭を撫でてから、背伸びをして、頬にキスをひとつ。 「…さ、帰りましょ」 「めーちゃん、…ありがと」 珍しく私から手を繋いで帰る。 そんな、 普段とは少し違った日も。 たまには素敵に思えるものかもしれない。 -fin- [*前へ] [戻る] |