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燃桜
二話

北庄城天守閣では激戦が繰り広げられていた。炎の中天守に殺到する豊臣兵を柴田勝家自身を含む僅かに残された柴田兵が応戦する。もはや背水の陣、既に勝色はない。そしてここまで炎を上げる本丸を敵兵に囲まれながら脱出するのは降伏という方法を除いては不可能である。



「でえぇいりゃぁぁっ。」


目前に迫る兵の一人を柴田勝家の槍が胴を貫く。勝家が吠え槍を振るう度に豊臣兵が次々倒れていった。そしてある程度なぎ倒し払った所でついに最後の槍が無情にも折れてしまった。勝家は折れた槍を刺さった兵ごと天守から投げ捨て脇差を引き抜いた。洗練された鋭い短刀が炎に輝く。



「わしこそは旧織田家家老、かかれ柴田こと柴田勝家じゃ。豊臣の弱兵ども、死にたい奴は前に出ろぃっ」



勝家の大喝に豊臣兵は恐慌した。そして最後のあがきと勝家と兵が豊臣を蹴散らす。柴田兵も勝家に鼓舞されて鬼神のように荒ぶる。しかし、彼らがいかに奮起しようと敗北は変わらない。



脇差しが折れてしまい勝家が辺りを見回すと生きた豊臣兵はいなかった。まだ残っている階段から豊臣兵があがってもこない。



(いよいよ落ちるか……)


勝家は脇差しを投げ捨てると乱れた髭を正し、天下の間に向かった。

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あきゅろす。
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