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燃桜
二話


「…市、浅井は今どんな状態か…知ってるかな?」


市は頬を赤らめたまま首を振った。


「フフッ…近江南部の勇と言うのは大袈裟、実際は北部の朝倉義景殿に従属関係、地獄の底までも朝倉殿に付いていかなければならない…いわゆるお連れさ。…市…我が浅井家自体、朝倉殿の人質みたいなものなんだよ。」


長政はゆっくりと市の頭に手のひらを乗せ、羽根のように軽く頭を撫でた。今まで長政にこんなに近付いた事はなかったが、こんなに暖かい人だということを市は今ようやく感じとった。



「私は市を人質とは思わない。市が望むなら、清洲に遊びに行く事も義兄信長様に会いに行く事も咎めたりしないよ。部屋に閉じ込めたりもしない…好きにして構わないよ。せめて市だけは、不憫な思いをさせたくない。」


「…………。」


市が長政の顔を見上げると、長政はニッコリと微笑んでいた。


「会って数時も経っていない男を好きになれなぞ、そもそも無理な話さ。私の事をどう思っても構わないよ。…ただ。」


市は首を傾げた。

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あきゅろす。
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