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燃桜
一話
既に越前北庄城は豊臣秀吉の兵に囲まれ、郭の一部は既に炎上していた。残りの郭、城内、天守では柴田勝家の兵が未だに籠城を続けているが、もはや敗色は濃く豊臣の勝利は目前に迫っていた。


秀吉は本陣の中を落ち着かない面持ちで歩き回っている。すると配下石田三成がかしこまって陣内に入り秀吉に頭を下げた。三成は降伏してきた将の名を次々に読み上げ、最後にもはや勝利に誤りはないと報告する。が、秀吉の表情が緩まる事はなかった。むしろ炎を上げる北庄城を何度も眺めては、何か狼狽したように小さく情けない嘆き声を上げ落ち着く事がない。



「先に降伏した将、前田利家の情報によるとこれ以上の兵力は北庄城には御座いません。背後を攻められる心配もないかと……。」


「そんな事ワシはどうでもいい。」



三成は不思議そうに秀吉の顔を見上げ首を傾げた。


「ああ、お市様…。」


なんだそういう事かと三成は小さな溜め息を吐き再び頭を下げた。秀吉は扇で膝を何度も叩き北庄城を眺め続けている。



「あの猪武者にあのお美しいお市様が命を共にするはずがない。はやく出てきてわしにお姿を見せて下さい。」



狼狽する秀吉を三成は冷ややかに眺め、炎をあげる北庄城に目をやった。郭の炎が今本丸に移ろうとしている。

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