On your mark 第八話 「正紀!救具だ。」 勝己が戻ってきた。腕に隊員用の救護箱と毛布を持っている。 「……助かるかもしれないな。」 勝己は正紀から彼女を受け取り毛布で包み込む。 正紀は栄養剤を彼女に飲ませようとしてみた。意識は無いため喉に直接流し込むしかない。 『大教祖を逮捕した。各隊員に告ぐ、作戦は成功だ。負傷者はいないか?』 勝己の胸ポケットから司令官の声が鳴った。 はっと勝巳は立ち上がり、バッグから通信機を取り出す。 「70階班の茶松勝巳です。フロア西側の部屋で治療が必要な少女を発見しました。おそらく信者ではありません。」 勝巳は一緒彼女を見た。 「え〜っと…現在気を失ってます。で、極度の精神衰弱が見られ、身体にな無数の傷があります。それと……。」 『…何だ?』 勝巳は一瞬黙り込んだ。よく考えれば「彼女」は人間ではないかもしれない。背中から生えてるものがそれを物語っている。もしかしたら治療法は人間とは全く違うかもしれない。 「…翼が生えています。」 『………?』 妥当な返事が返ってくる。無理もない。 「とにかく保護が必要です!。」 勝己は怒声を加えて話す。司令官も半信半疑だったろうが、救急隊を呼ぶと言い、無線を切った。 全く不思議な話だ。翼の生えた少女なんて、漫画や映画でしか見た事はない。 [前へ][次へ] [戻る] |