ぬら孫×庭球
2
ニヤニヤ笑う男はゆっくり雅治に近づいて来る。
「な、何で殺したんじゃ!何で、何で…」
雅治には分からなかった。自分たち家族と何の関係も無いはずのこの男が家の中に居て、家族がこんな姿で指一本動かす事なく、転がっているのか。
「何でって言われてもなぁ、たまたまだ」
「…たまたま?」
「ああ。金が欲しくてその辺の家に入ったは良いが、家人と遭遇しちまった。だから殺した。うん。やっぱり、たまたまだなぁ」
笑いながら殺した理由を話す男が憎いと思った。こんな下らない理由で家族は殺されたのか。
「そんな下らない理由で殺されたんか!?ふざけんじゃなか!」
怒りで雅治は男に怒鳴りつけた。だが、それはこの状況ではしてはいけないことだった。
「アア゛!?っのクソガキがぁ!」
雅治の言葉に逆上した男は、雅治の家族を刺した包丁で雅治の事も刺したのだった。
「ッアアアアアアアッッ!!!」
(痛い痛い痛い!痛い!刺された所が熱い!火で焼かれてるみたいに熱い!!)
(憎い憎い!許さない!絶対に許さない!家族も殺されて俺も死ぬのにこの男は捕まるだけ!?そんなの許さない!呪われてしまえ!ああ、憎い!!)
(秋房はこんな奴らも守るの!?こんな奴らも守られるの!?)
(ああ、憎い!俺に力があれば!こんな事にはならないのに!!悔しい!大切な人を守れるだけの力が欲しい!)
――憎しみと悔しさと悲しみの中で雅治の意識は薄れていった。
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