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小話
春爛漫を、君と。(ハオ葉)

「ハオ――――っ!」

突然響いた声音と、近づいてくる温かい巫力。
葉が自らハオのところに来るなんて珍しく、ハオは少なからず驚いていた。

「ハオっ、今から絶対オイラの心読むなよ?」
「……どうしたんだい?藪から棒に」
「いいからっ!絶っっ対読むなよ!?」
「分かったけど、ねぇ葉?今日は一体なんの用で来…」
「話は後だ!オイラについて来て欲しいんよ!」

葉にしては本当に珍しく、強引にハオの腕を掴んだかと思うと全速力で走り出した。
引っ張られながら走るのに慣れていないハオは何度も転びそうになったが、そこは未来王の意地でふんばって回避する。

「よっ…葉!そんなに急いで走らなくても、目的地を言ってくれればSOFで…」
「それじゃ意味ないんよ!あとちょっとだから!」

葉に連れられて走りこんだ場所は森のなかだった。あまり人が入らないせいか、背丈の高い草が伸び放題で生えている。
この中で走るのは流石に困難だが、葉とハオの足は少しスピードが緩まっただけで走っている状態であるのに変わりはなかった。

昼でも木々が作り出す影のせいで薄暗いこの森は、ハオが一人で考え事をする時、たまに来るだけの場所だ。
葉の修行コースからは確か外れていたはず。もしかして、拡大されたのかな…などとハオが考えていると、前方を走っていた葉が急停止した。

「ほらっ着いたぞハオ!」

眼前に広がっていたのは、白、桃、黄、青と色とりどりの花々。この森で唯一日光がさんさんと当たる開けた場所だった。
ハオは以前からこの場所を知っていたが、こんなに花が咲いている光景を見るのは初めてで、暫くその美しい様を無心で眺めた。

「綺麗だろ?」

葉もまた花畑に視線を向けたまま、ハオに話しかける。
その顔は柔らかく優しい微笑を浮かべていて、葉の穏やかな人格そのもののようだった。

「うん、とても」

外界はもう春がきているにも関わらず、この森の中だけは陽の光が当たらず冷たい。
でも、そんな場所でも此処だけは暖かく、むしろ外よりも美しくそこに存在していた。

「一番にハオに見せたかったんよ…」

その言葉に驚いて、ハオは葉を振り返る。
許嫁や仲間達を差し置いて自分のところに来てくれたのかと、ハオは本当に純粋に驚いた。

「どうしてだい?」
「ん、特別な理由なんかねぇぞ。ただ、おめぇだったらすごく喜んでくれそうな気がしたんよ」
「…ふーん…」

自然が好きなハオには、自分が手折った花をあげるよりこの景色そのものを見せたかった。
そんな葉の思いははっきりとした形を成すことはなかったが、時折優しく吹く春風にのってじんわりとハオに伝わった。


春爛漫を、君と。


「ふふ、お前と花見をする日が来るなんて思っていなかったよ、葉」
「おお、オイラもだ」


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あきゅろす。
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