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小話
僕たちのバレンタイン(ハオ葉)

その日、僕は基地から出てのんびりと散歩していた。
2月とは思えない程の暖かい気候の中、背もたれになりそうな木に寄りかかってまどろむ。
そうして少し経ったころ、己に似た巫力がだんだん近付いて来るのを感じた。
心なしか、足取りが軽やかだ。何か良いことでもあったのだろうか

「お、ハオ!丁度良かった、お前にあげたい物があるんよ」

半身から花を飛ばしながら渡されたのは、金のリボンで結ばれた小さな箱だった。
何だろうと思って開けてみれば、中には一口サイズのトリュフがふたつ入っている。
ああ、そう言えば今日はバレンタインデーだったね

「アンナに作ったやつの残りだから数は少ねぇけど……まぁ家族チョコとでも思ってくれ」

無意味に頭を掻きながら、うぇへへ…と照れ笑いする葉。
どうやら(一応)敵である僕に、ただ単にチョコレートを渡しに来ただけらしい。
アンナへのチョコの残り、という言葉にも嘘はなかった。

「ふぅん…ま、くれるなら有り難く貰っておくよ」

少しばかり形が歪なトリュフをひとつつまんで、口の中に放り投げる。
甘さとわずかな苦味が溶けて、口いっぱいに広がった。

「…甘いな」

「うぇへへ、そりゃあチョコだからな」

また笑った葉の口に、残っていたもう一つのトリュフを放り込む。
少し驚いた表情をした葉は、それでも口を動かしてチョコレートを食べ始めた。
何も言うことなくただモフモフとチョコの味を楽しんでいる葉は、まるでハムスターみたいだった。
嫁にはチョコを手作りしたものの、自分はまだそのものを口に出来ていなかったらしい。

「確かに甘ぇな」

「でも葉は好きなんだろう?」

「おお。…あ、すまんな。一個もらっちまって」

「別に構わないさ」

特に甘いモノが好きなわけでもないし
それに…何か可愛いものも見れたしね
……またお前に甘いモノを与えれば、さっきみたいな反応をするのかな

「来年は僕がお前に用意するよ」

にこりと笑って言ってやると、葉はとても驚いた様子だった。
でもそれも最初の内だけで、だんだんと嬉しそうな笑顔になる。

「おお。期待して待っとる」


(今はまだあやふやな愛情の欠片、
どうか来年も再来年も、君に。)

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