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03*
「あ……っ…はぁ……やべ…ぇ…きもち…いイ…」
「気持ちいいのか?」
「……ち…くしょっ…なんだっ……こんっ…」
 男に突っ込まれて感じてしまうなんて嘘だ。だが幾ら頭で否定しても、悪魔の身体は快楽にとことん弱い。ブランのペニスを咥え、それによって生まれる快楽を心地よいと感じ貪欲に貪るのはムスト自身。
「ブランっ!」
 目に涙を溜めながら自分を曝く人物の名を呼ぶ。
「頼むからっ、コレ、外してっ!」
「何で?」
「いいからはずぜ!! はやっ…くぁぁあっ!」
 言われた通りブランがムストの手の拘束を解く。自由になった途端、ブランに縋り付くように伸ばされた二本の腕。それがブランの首に巻き付くと、自分の方へと引き寄せ強引に唇を重ねた。
「んっ……あはっ……んんっ……ぁ…」
 何度も何度も貪欲に。上も下も未だ足りないと喰らい付く欲求。ブランがムストを。ムストがブランを。互いに高め合う肉欲が生み出すのは狂うほどの強い悦楽。昇り詰め熱を高めれば後に控えるのは解放だけ。一段と深く中を穿たれた瞬間、ムストは大きく叫び背を弓なりに撓らせて身体を痙攣させた。
「うあぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!」
 撒き散らかされる白濁は、自己を主張するムスト自身から放たれ、部屋や互いの身体を汚す。達った衝撃で強くブランのモノを締め付ければ、ブランが少し呻って中へと熱を解きはなった。何度か腰を打ち付け完全に中に出し切ると、ゆっくりと抜けて行く萎えたブランのペニス。
「………はぁ……はぁ…」
 肩で息を繰り返すムストは、恐ろしい程の虚脱感と尻から伝わる違和感に眉を顰めた。
「大丈夫…か?」
「んなように…見えるのか…? …あほ……」
 寝起き早々訳の分からない本を持ってこられ、突然おっ始めた性行為。訳が分からないまま女の役割を押しつけられ、あれよあれよういう間に掘られた尻が痛みを訴える。
「さいっ…あく…」
 ああ、ホント大泣きしてぇ。大泣きしてすっきりするなら、今すぐにでも声を上げて泣きてぇよ。
 そんな事を考えて居たら、ブランの手がそっとムストの額に触れ、汗に濡れたブラウンの柔らかな髪を丁寧に掻き分けた。
「なに…?」
「んー…」
 気怠げに瞼を開くと直ぐ目の前にブランが居て。軽く触れるキスは直ぐに離れてしまう。
「………は?」
「何て言うか…満ち足りてます…って感じ?」
「…………」
 目の前の奴は物凄く満足そうな笑顔を浮かべてそう言った。
「成る程。セックスっていうのはこういう事を言うんだな」
「な……はぁ? ちょっ…えぇ!?」
 誰かお願い。この状況を説明してよ!!
 一人取り残されたムストが口をぱくぱくと開閉させながらブランを見る。
「ムストだって気持ちよかったんだろう? 俺は凄い気持ちよかったよ」
「あ……う……が……な……」
 言いたいことは沢山あるが、沢山有りすぎて何一つまともな言葉になりゃしない。
「そう言えば、今まで俺お前の事苦手って思ってたけど、こうしてみると結構可愛いのかもな」
「げぇっ!?」
 何て都合の良い自己解釈。こんな天使見たことない!
「ムスト、俺に色んな事教えてよ」
「はぁ!?」
「俺、判らないことだらけだからさ。何て言うか…やっぱり経験不足っていうのかな? 今回の事でそれ、凄く痛感した。だからさ、もっと色んな事知りたいんだ。悪魔のこと、人間の事、世界の事。そして…」
 再び近付いてきたブランの顔。またキスされるのかと思い身構えると、今度は顔を逸れ耳元でそっと囁かれる。
「ムストの事。もっと知りたいな」
「ばっ……」
 この先、俺の運命どうなっちまうんだ!? ムストは先行きに強い不安を覚え頭を抱える。
「とっ…取り敢えずブラン!」
「何?」
「一つ教えろ! その本は一体何処で手に入れた!?」
 そうだ! 全てはこの一冊の本のせいだ!! 取り敢えず本に話題を移し今言われた言葉を有耶無耶にしてしまうことにしよう。そう決めて本の出所は何処だと訪ねると、ブランはあっさりと種明かしをしてきた。
「この家の書庫にあったけど?」
「なっ……」
 まさか、最後にそんな…オチ……?
「ナミルっっっっっっ!!」
 ムストの叫びが家中に木霊する。
 森の奥の小さな小屋で。今日も一日は平和に過ぎていくようです。

おしまい。

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あきゅろす。
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