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02*
 だがしかし。ムストの願いも虚しく剥ぎ取られた自分の衣服。魔界の侯爵…っていうのもアレだが、それなりに地位も名誉もある眷属の自分が、何故天使如きに裸体を曝さねばならないのだろう。考えても考えても見えてこない答えに段々と気が遠くなったムストは、ブランの下で渇いた笑い声を上げる。
「えーっと…先ずはキスをするところから始めます。……キス? …ってことはつまり…」
 ふいにムストの顎にブランの指が添えられくっと上に持ち上げられる。
「こういう事かな?」
「ふぅっ!?」
 重ねられた柔らかな感触。肌に掛かるふわふわの亜麻色がムストの頬を擽る。
「んんっ!!」
 拙いキスは直ぐに終了。何て言うか実に機械的なそれは、さっさと重ねた唇から離れていき、さて次は…なんて言いながら再び指南書を捲り始める。ああ、何て言うかムードぶち壊し…じゃん? 別に男とセックスしたいって訳じゃ無いけど、これじゃあ余りにも悲しすぎる。
「ペッティングによって気持ちを高める効果が得られます。……ペッティング? ペッティング……えーっと…こういう事か?」
「うぁあっ!?」
 不意に鎖骨に感じたくすぐったさ。その刺激にムストの身体が小さく跳ねる。
「ん?」
「くすぐったい! 何すんだ、アホ!!」
「やり方が間違ってるのか? なら舐めてみるか?」
「ぎゃっ!?」
 次に襲ってきたのは蛞蝓が這いずるような滑った感触。全く心の準備が出来ていない上に気持ちがそっちに傾かないから気持ちいいかと言われれば全くそんな事は無い訳で。
「止めろよっ! 気持ち悪い!!」
 と言ってぎゃーすか喚くしか出来ないムストは、足をばたつかせて抵抗を見せる。
「……何だ? 本に書いてあることと全然反応が違うじゃん」
 そこで諦めてくれればいいのに、寄りにもよってブランはそれをすっ飛ばして先に進むことに決めたようだ。
「次は…ヴァギナを愛撫しながら膣を解し、充分に緊張が解け解れた所でペニスを挿入します。…ヴァギナ?」
 そこで漸くブランの行動が止まった。
「…………」
「んだよっ!」
「お前にあるのはどう見てもペニスだ」
「当たり前だ!!」
「コレじゃあ前に進めない」
「当然だろ! 寝言は寝て言え馬鹿野郎!!」
「……困ったな」
 頼むから馬鹿な事は今すぐ止めて諦めてくれー!! ムストはそう必死に心の中で訴え続ける。ブランは暫し本とムストの下半身を交互に眺め考えて居たが、やがて何かを思い付いたらしく明るい表情を浮かべると、「そうだ!」と言って小さく手を叩いた。
「孔ならあるじゃねぇか!」
「へ?」
 ま……まさか…。ムストの頭に過ぎる嫌な予感。
「こっちを使えば代用って出来るんじゃねぇ? なっ。そうだろ、ムスト?」
「ぎゃぁぁぁぁっっっ!! 嘘だろ! おい!!」
 ちょっ、止めてよ、勘弁して!! 幾らセックスの経験豊富でも、一度も使ったことがないのはバック。其処は処女なんです−! 本気止めてよ! なんて訴えるのも恥ずかしいが、男に掘られてあんあん言う趣味は生憎持ち合わせてねぇっつーの!
「取り敢えず、実戦、実戦」
 妙に楽しそうにそう零すブランが、前振りもなくいきなりムストの其処に指を突き立ててきた。
「いっっっっ…づぅぅっ……」
 滑りも何もない渇いた指が容赦なく中を暴れ回る。普通に気持ち悪い。その上痛い。
「ばっ…抜け! このやろ……」
「で、解したらペニスを挿れ……ペニスって俺のペニス?」
 再び止まるブランの行動。ムストの中から指を引き抜くと、履いていたズボンの前を寛げ、取り出されたのは萎えたペニス。
「なあ、ムストー」
「んだよ!」
「これ、絵と違うぞ?」
 この状況でその質問かーっ!! 突っ込むべき所は寧ろ其処ではないのに、敢えて其処に突っ込まずには居られない根っからの突っ込み体質であるムストは、ついつい大声でブランを怒鳴りつけてしまう。
「当たり前だろ!! 勃起してねぇんだから!」
「ぼっ…き? 何それ?」
「男はねぇ、興奮したらソイツが勃つの! そしたらそれを女に突っ込む! そんな事も分かんない訳!?」
「成る程な。一つ勉強になったよ」
「ああ、もう…」
 つ…疲れる。もう頭が痛くなってきた。ツッコミを入れる度に力む身体に蓄積される疲労感。何だか全ての事が投げ出したくなってムストは目を瞑り溜息を吐く。
「なーあ、勃起ってどうすればなるんだー?」
「そんなもん、手で擦れ! そうすりゃ勝手におっ勃つ……」
 って、あ。しまったと目を見開きブランの方へと視線を向けると、言われた事を素直に実戦するブランが其処に居た。自分で掘った大きな墓の穴。所謂墓穴ってやつだ。
「おお!」
 ブランの嬉しそうな声が部屋に響く。
「形が変わった!」
 生理現象として当然のことなのに、それに妙に嬉しそうに言葉を零すコイツは心底アホだ。ムストはそう思う。
「コレでムストの中に挿れられるな」
「………え?」
 言われた言葉に一気に引いていく血の気。急に折り曲げられた身体が苦しくて思わず潰された蛙のような醜い声が口から零れてしまった。
「ぐえっ」
「じゃ、挿れるぞ」
「まっ…やめっ…!!」
 宛がわれた熱いモノに身体の芯から冷えていく感覚。それは容赦なくムストの中へと突き立てられ、堅く閉ざされていた窄みを強引に開き中に埋められた。
「がぁあぁっっっ!!」
 痛い! 無茶苦茶痛い!! 尻から来る痛覚が、ダイレクトに脳を刺激する。頭の中で聞こえた不吉な音の正体なんて知りたくもないのに、内股を伝わる滑る感触が、それは夢じゃないのだと如実に物語った。
「がっ……はっ……うぐっ……あ……」
 痛みで見開かれた目から涙がこぼれ落ちる。何だってこんな事に。兎に角早く自分の中からコレを吐き出さないと、何時までも辛いままに違いない。
「抜けよ! 馬鹿ブラン!!」
 何とか奮い立たせた気でブランを睨み付けると、困った様に眉を下げたブランが情けない声を上げて助けを求めて来た。
「それが……何か……動けないんだけど…」
「ん……だと……?」
 挿した衝撃で確かに切れた。流れ出した血はブランのペニスを紅く染め上げていく。だから動きはスムーズになるだろう? と言われると実はそうでも無いようで、中途半端に刺さったそれは、ムストが侵入を拒む様にきつく締め上げたせいで抜けなくなってしまったようだった。
「へっ…たくそ!!」
 抜くのも挿れるのもどちらも不可能。さて困ったどうしよう…と考えた時に目に止まった物は一本のワインボトル。アレを使うのは勿体無いが、手近にこれより良い道具は見当たらなかった。苦渋の選択で決断を下したムストが、ブランに向かって怒鳴りつける。
「そこにワインがあるだろ!」
「ああ、コレ? あんまり飲むなと言っているが全く止めないワインの事? これがどうしたって言うんだよ?」
「それを…ここにたらせよ」
「は?」
 ここって何処? そんな判りやすい疑問を表情に出して訴えるブランに向かって、ムストは自ら足を広げブランのペニスが刺さった場所を彼の目の前に晒す。
「で、何処に垂らす訳?」
「ここだって言ってるだろ!! テメェのペニスが刺さってる俺の尻の穴にだよ! タコっ!」
 判らないなら自分の指で触って確かめろ! そう言って指示した箇所は互いが繋がっている結合部。ブランの指が触れた境界。その刺激にムストは苦しげに眉を寄せる。
「そう言う趣味?」
「ばっ! ちげぇ!! 乾いてんのに無理矢理突っ込みやがるから無茶苦茶痛てぇんだっつーの! 馬鹿!!」
 何だってこんな事まで説明しなければならないのだろう。情けなくて泣きたくなってきた。
「いいかっ? ブラン! それを此処に少しずつ垂らしながら、ゆっくりと出し入れしていくんだ。全体に水分が行き届くように馴染ませろ。そうじゃなきゃ痛くてまともに力が抜けねぇ…」
 ムストに促されるようにワインの中身を傾け、ブランは互いの結合部に少しずつそれをかけていく。アルコールが傷口に染みて痛みを訴えるが、段々と滑りを帯びたブランのペニスが出入りする度直腸から直接取り込まれたアルコールの成分が、ムストの感覚を麻痺させていく。
 何時しかムストは自分から腰を動かし、ブランを煽るように中でブランのモノを締め付け始めていた。

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あきゅろす。
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