[携帯モード] [URL送信]
05*
「手伝おうか?」
 シャワールームにいきなり響く声に、青年は吃驚して肩を奮わせた。
「楽しそうだね」
 いつの間にそこにいたのだろう。入り口にはさっきの男が立ってこちらを見ている。
「楽しくなんかっ…ナイッ…!」
 中途半端に火の点いた体を庇うようにしながら、彼は入り口に立つ男を睨み付ける。
「呼吸が荒いヨ?」
「う…るさ…いっ」
 尻に指を咥え、前を扱いている姿を見られるなんて最悪だ。青年は悔しそうに唇を噛んだ。
「ツライんデショ? 手伝ってアゲルよ?」
「いらねぇっつってんだろっ!」
 訪れたのは暫しの沈黙。
「ソウカ。残念」
 『残念』と言いながらも、何故か男は、断りもなくシャワールームへと足を踏み入れた。
「でっ、出てけよっ」
「何で?」
 徐々に縮まる二人の距離。逃げ出したくとも背後にあるのは壁。青年の背中を嫌な汗が伝う。
「ツライの良くないよ?」
 後ずさった彼の背中に当たった冷たいタイル。
「濡れるだろ!」
「構わないよ」
 男は一気に距離を詰めると、素早く青年の腕を捕まえて捻った。
「痛っ…」
「大人しくシテテネ。じゃないと、折れても知らないヨ」
 男の顔が近付いてくる。キスされる…と身構えたが、顔はそのまま肩に移動した。
「声…出してもイイヨ」
 言い終わると同時。男の指が青年の中にへと埋められた。
「んっ」
 条件反射でその指を締め付けてしまう孔。それに感じて零れた声に吐息が混ざってしまう。
「クスクス」
 そう笑う声が耳に届いた。遊ばれている。からかわれているのだと思うと腹が立つが、捕まれた腕の恐怖と中で動く指に翻弄され身動きが取れない。
「イッパイ出てくるね」
 そんな言葉にすら反応してしまう今の自分。
「キモチイイ?」
「きもち…い…い……」
「そう。なら良かっタ」
 嬉しそうに言う男。指は優しく中で動く。少しずつ。だが、確実に掻き出されていく白濁。湯のせいなのか男の指のせいなのか判らないが、頭が逆上せたように惚っとしてきてしまう。
「イッパイ感じるとイイ。アリスが気持ちよくなってくれると嬉しいカラ」
 男の言いたいことなど何一つ判らないが、その技術はかなりなもので、男の腕の中で青年はだらしなく喘ぐことしか出来なくなってしまっていた。

「信じらんねー…」
「ナニガ?」
 シャワールームで中を綺麗にしてもらう。何故かついでに勃起したペニスの処理と汚れてしまった全身の後始末もされてしまった青年が、手渡された柔らかなのタオルに顔を埋めながら項垂れていた。
「……何でもねーよ」
 さっきまで指一本で酔わせていた男は、相変わらずにこにこと笑ったまま。
「そんなことより、服、探してきたよ」
 思い出したように呟いた後、どこからともなく取り出した衣服を男が青年へと差し出す。
「…………え…?」
 一瞬、何が起こっているのか判らず青年は呆けた表情を浮かべて固まる。
「ほら、早く受け取って」
「…あ…ありがと」
 取り敢えずは礼の言葉を言いながら、青年は手渡された衣服を受け取った。
「なっ…」
 受け取った服を広げて思わず絶句。
「こんなの着れるかっ!」
 その衣服の有り得無さに思わず持っていた服を勢いよく床に叩きつける。男から手渡された服。それは女物の青いエプロンドレスだったからだ。
「着れないの?」
「当たり前だ! これは女物だろ!」
 しれっとそんなことを言われ隠すことなく怒りを見せれば、男は判らないと言うように首を傾げて見せた。
「そうか。アリスはエプロンドレスかと思ったのに…残念」
 余り残念そうにも見えない反応を見せながら言われた台詞。
「それじゃあこれは?」
 そう言ってもう一着、男が青年に服を差し出す。警戒しながらも青年は服を受け取った。
「これなら着れる」
 今度は普通のTシャツと青いジーンズ。一応はまともな服も持ってきて貰えていたことにほっと胸を撫で下ろした。さて、着替えを始めよう。そう思い行動に移したところで彼はあることに気が付き顔を顰める。
「…なあ」
「何?」
「下着がねぇんだけど…」
 渡された服には下着が無い。
「必要?」
 実にあっさりと言われた台詞。
「必要だろーが!」
 思わず青年は突っ込みを入れてしまった。その反応に男は首を傾げて暫く考えている。
「必要なんだ。それじゃあ、これ」
 有るなら始めから一度に出して欲しい。そう思いながら青年は差し出された下着を引ったくる。
「…なあ」
「何?」
 衣服は全て揃った。今度こそそれを身に付けよう。そう思って動いたところで青年は男を睨み付けドスの利いた声で一言。
「見んなよ」
 それは多分正常な反応だろう。着替えたいのだが、男が見ているため着替えにくいと感じてしまい男に後ろを向いていろと指示を出す。
「どうして? 減るものじゃないよ?」
 それが納得いかない。そんな風に男は首を傾げた。
「減るんだよ!」
 だがそこで青年も譲る事は出来ない。精一杯大声で怒鳴りつける。
「変なアリス」
 男は小さく首を傾げたが、それ以上は何も言わずに後ろを向いた。
「…疲れる」
 青年が急いで衣服を着る。
「……あ…」
 当然といえば当然なのかもしれないが、服のサイズは合って等いない。下着以外は上も下もサイズが大きくて余裕がありすぎのようだ。

[*前へ]

7/7ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!