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04*
 ハヤくイキタイ…
 左腕に重心を移動し、体の軸を傾ける。肩を床に着けて体を固定し、空いた右手を張りつめた自分自身に添わせると、ゆっくりと動かす。脳がとろけてしまいそうな幻想。前の刺激で後ろが中にある物を締め付けると、今度は後ろにある物の熱で前が跳ねる。なんという相乗効果だろう。こんな痛いくらいの快楽は知らない。
「あぅ…あ……あぁ…」
 次第に口の両端がつり上がる。
『俺……笑ってる?』
 内側を穿つ大きな衝撃。
「うあぁぁぁっっ!」
 直腸を逆撫でする突起物と、中に注がれる熱いほとぼり。目も眩むような快感に今まで解放される事の無かった熱を吐き出す。
「……はぁ…はぁ…」
 満足そうに喉を鳴らす音が背中越しに聞こえる。気怠い体では息をするのがやっとで、襲い来る睡魔に逆らうことが出来ず自然と瞼が下りる。
「もう…」
 零れ出た言葉は最後まで紡がれることなさそうで。
「…アリス…」
 薄れゆく意識の中そう囁く優しい声を聞いた気がするが、それを確かめることなく青年は意識を手放した。

「カチッ…カチッ…」
 闇の中で聞こえる不思議な音。
「カチッ…カ…チ…」
 不規則に同じ音だけが繰り返される。
「カ……チ……」
「んっ…」
 うっすらと目を開ける。闇に慣れた目に光はきつく、何度か瞬きを繰り返して目を慣らす。惚けた頭で見た視界に広がるのは灰色の天井。中央にある蛍光灯の一つが切れかかっているようで、点滅を繰り返している。どうやら音の正体はこの蛍光灯のようだった。
「ここは…」
「目が覚めたかニャ?」
「っ!」
 突然視界に現れた顔に心臓が飛び上がった。
「オハヨウ、アリス」
 そう言って目の前の男は笑う。
「起きあがれるかい?」
 自分の方へと差し出される手。
「いや。いいよ」
 その手を断り、青年は上半身を起こした。体が怠さを訴える事に思わず眉間に皺が寄る。
「スゴくソソラレル格好だね、ソレ」
「はぁ? …なっ!」
 男に言われて青年は慌てて自分の状況を確認した。破けた衣服に明らかに何かの行為が残る身体。改めて今、自分がどんな格好をしているのか理解し表情が苦い物へと変化する。
「獣にでも襲われたのかニャ?」
 逐一嫌な所を突いてくる男の台詞によって鮮明に蘇る記憶。嘘だ…あれは夢だ…。そう自分に言い聞かせながら青年は首を振る。
「これじゃあ良くないね。洋服を探さなきゃ」
 喉を鳴らして男が笑った。
「うっ…煩い! 笑うな!!」
 思わず上げた怒鳴り声。男の態度に腹が立つが、今はそれどころではない。しかし、だからと言って羞恥心が消える訳でもなかった。一応は男を睨み付けながら自分を守るようにして青年は警戒心を見せる。
「睨んだ顔も可愛いネ」
「…………はぁ?」
 余りにも緊張感の無い台詞に思わず間抜けな声を出してしまった。
「もっとアリスのこと見ていたいけれど、まずは洋服を探さなくちゃ」
 意識の外で男の声が響く。…何だって? …今、こいつ、何つった? 必死に考えるが全く意味が判らない。
「…かわいい…だと…?」
 言われた台詞を復唱してみると軽い頭痛に襲われる。あり得ないにも程がある一言。男に対して可愛い。今日日、小学生の子供でもそう言われて喜ぶ人間は少ないだろう。ましてや青年は小学生と言える年齢ではない。
「毛もしっかり生えて皮も剥けてるような奴に可愛いだと?」
 有り得ない。青年は頭を抱えて唸り声を上げる。
「…いや…待てよ」
 其処で思い付いたのは一つの可能性。
「もしかしてコイツ…ホモか!? じゃあ、俺、スゲェヤバいんじゃね? どうすりゃいいんだ!!」
「一人百面相、楽しい?」
「はへ?」
 男の一言で、青年の意識は一気に現実に引き戻される。
「見ている方は楽しいヨ」
 独り言をしっかり聞かれてしまっていた。それが判った瞬間、顔から火が出そうなくらい恥ずかしくなり、青年は居たたまれず俯いてしまう。晒されていた股間を手で隠し男の視線から逃れるようにして身を縮め距離をとる青年に、男は困った様に眉をさげて苦笑を浮かべた。
「洋服探してくるね。シャワールームはあっちだから」
 ふわりと大きな手が頭を撫でる。微かに匂う獣臭さ。
「あっ…えっ? ちょっ…」
「中に残ってるんデショ? カキダさないとお腹痛くなるヨ」
 顔を上げた青年に男はシャワールームの場所を指した後、すっくと立ち上がり背を向けて歩き始める。呆気に取られた青年のことなど無視らしい。男は振り返ることなく部屋を出ていってしまった。
 一人残された青年は溜息を吐く。もう、何がなんだか判らない。ここ数時間…とは言え、正確な時間は判らないのだが…で、あり得ないことが多すぎる。ふと目に付いたのは膨れた下腹部。軽く押してみると尻の穴から粘ついた何かが出ていく感触がする。どうやら、コレは本当の事らしい。
「…悪夢だ…」
 その場から立ち上がろうと身体を動かせば、締まりが悪くなるのか閉じられていた尻の穴から中に有るものが溢れ出してくる。下半身に力を入れるのは危険らしい。考えた結果出した結論は、這ってシャワールームまで移動すること。なんて惨めだと青年は溜息を吐いた。
「痛てて…」
 シャワールームに入り壁づたいに立ち上がる。尻の違和感と腰の怠さは最高潮。何とかシャワーの下まで移動すると、蛇口のコックを捻る。冷たい水を被ると覚悟して身構えたが、以外にも吹き出されたものは適温のお湯だった。少し拍子抜けしてしまう。
「あー…」
 頭から湯を被る。少し熱めの温度が気持ち良い。
「ダメになっちまったなぁ…服」
 ボロボロになった衣服が肌に張り付く。上着の方は獣の爪で破かれた腹の部分以外なんて事はないが、ズボンの方は完璧に駄目になってしまっている。下着も爪が掠ったところが見事に裂けていた。
「結構気に入ってたのに…」
 着られなくなってしまったズボンと下着を脱ぎ捨てる。そのまま上着も脱ごうかと思ったが、足の違和感を感じて、先に靴と靴下を脱ぐことにした。
「うわぁぁっ!」
 屈んだ瞬間、尻の穴から大量に粘着質な液体が溢れ出る。
 忘れてた。そう青年は顔を顰める。なるべく腹を刺激しないように靴と靴下を脱ぎ捨てると、彼は盛大に溜息を吐いた。
「…何とかしなければ」
 そう頭では理解していても、自分の尻の穴に指を突っ込む勇気はない。だからといって、このままにしておくわけにもいかないだろう。まずは気持ちを落ち着かせるために深呼吸をすることにした。壁に手を着けて深く息を吸って、そして吐きだす。それを何回か繰り返し漸く決まる覚悟。
「……うっ」
 ゆっくりと尻の窄みに這わせた指。少し熱を持った穴の入り口がべたつきと滑っている。無意識に動く孔から少しずつ溢れ出る粘液。何度かその周りを指で撫でた後、青年は覚悟を決めてその指を突っ込んだ。
「くぅっ…」
 目からこぼれ落ちた涙。尻の孔に指を突っ込んで獣の精液を掻き出す自分が凄い惨めで仕方ない。
「うぅ…」
 指を鉤状にして中を擦ると、音を立てて白濁した物が排出される。
「……っくしょう…」
 溢れ出る涙で霞む視界。肌に当たるシャワーから吹き出るお湯。タイルに落ちた白濁が、流れていくお湯と共に排水口に吸い込まれていく。
「チクショウ…チクショウ…」
 感情面では悔しくて仕方ないのに、身体は全く違う反応を示した。
 植え付けられた快楽を鮮明に覚えてしまっているそれが、今はない獣の熱を求めて疼きだす。指を締め付けるように腸壁が動き、それに感じてしまった肉棒が頭を擡げ始めた。
「くぅ…っん」
 …足りないんだ。こんなものじゃ。全然満足出来やしない。

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あきゅろす。
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